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町田版 公開:2018年11月22日 エリアトップへ

町田市立博物館より35 昭和のかおりと天木茂晴 学芸員 今井 圭介

公開:2018年11月22日

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『みかんの皮で作る』(水彩・紙)
『みかんの皮で作る』(水彩・紙)

 平成30年も残り1ヶ月と少しになった。来年の5月までには新しい元号が公表されていることだろう。それにしても、近年は日々の変化が目まぐるしい。だから、平成になる30年前と今、私たちの生活はどれだけ変わったのだろうかと思ってしまう。今は当たり前に使っているパソコンはあるにはあったが大変高価だったし、入力にはコマンド(コンピューターに指示をする命令文)を打ち込むため、使いこなすのがとても難しかった。スマホはなく、アンテナをひっぱり出す携帯電話を使っていた。その一方で、懐古趣味が流行り「レトロ」という言葉が使われだしたのもその頃であったように思う。それがこの頃「昭和のかおり」、「昭和感」といった言葉を耳にするようになった。昭和ノスタルジーである。私は昭和34年の生まれ、あの昭和が遠くなったと感じずにはいられないのである。

 ところで今、町田市立博物館では理科をそだてた挿絵画家と題して天木茂晴(1913─86)の仕事を紹介している=25日(日)まで。天木はまさに昭和に活躍した挿絵画家で、様々な雑誌や教科書に植物や鳥、昆虫をはじめとした生きものなど理科分野の挿絵を手がけてきた。例えば展示中の講談社・学習図鑑シリーズは私が小学生だった頃、我が家にもあったほどの人気の図鑑だった。挿絵を描いた画家は複数いたがその中に天木もいた。大人でも十分見応えのある図版は写実的で子どもの目に焼きついて離れなかった。今の図鑑類は写真やコンピュータグラフィックスにより、きれいでビジュアル的な構成になっているものが多いが、このシリーズはリアルな図版、解説などが子どもにとって少し難しいのではと思える内容だったがそれでも売れた。ある意味、子どもを大人扱い?していたのかもしれない。そんな時代だったのだ。

 また、天木には子ども向けのユニークな造形遊びを描いた挿絵もある。児童教育雑誌に使用されたものだが、ミカンの皮や赤や黄色に染まった落ち葉、木の実、松ぼっくりなどで、ヘビやカメ、ライオン、人形などを作ってそれを描いている=写真。描画のうまさとともに造形的デザインセンスもなかなかだ。子どもと一緒にそんな遊びに興じたら、さぞさぞ楽しいに違いない。

 昭和はのどかでよい時代だったなぁと思いつつ、ネット検索をしていたそんな時、実はこの造形遊びのページがいくつも見つかった。今なおこうした遊びが盛んに行われ、紹介されているのである。いや、むしろ今風で凝った作品が多くアップされ、説明もつけられているのだ。インターネットをはじめインスタグラムなどによるコミュニケーションの広まりや広告として有効性がこうした場を生むのだろう。これが平成スタイルというものなのかもしれない。しかし、絵具と筆で描かれた天木の昭和的温かみをもった挿絵も、時代を越えながらその魅力を失うことはないだろう。
 

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