町田 コラム
公開日:2020.03.05
町田天満宮 宮司 池田泉
宮司の徒然 其の55
ホトトギス
ホトトギスやウグイスというと、梅とともに描かれている場合が多いがめったに見たことはない。ホーホケキョと鳴くのはウグイスで、ホトトギスはしばしば「特許許可局」と鳴くと言われるが、実際に聞いてみると似ているが許可局とは鳴いてないように思った。それでも、信長・秀吉・家康の対比に使うなど名前の響きは日本人に親しまれている。さらに、ウグイスは声こそ有名だが特にウグイス色が鮮やかなのはメジロで、本人はそれほど綺麗なウグイス色でもない。境内には御祭神菅原道真公にお和みいただくためにたくさんの梅が植えられているが、絵画にあるようなホトトギスやウグイスは飛来したことはなく、メジロとモズとシジュウカラが圧倒的に多い。しかも梅のメジロをウグイスと間違えている人も少なくない。本来、ホトトギスは雑木林の高いところを好み、ウグイスはヤブウグイスと呼ばれるくらい雑木林の低いやぶの中や、人里でも生垣の中を好むから、本来梅の木に飛来する確率は少ない。
さて、写真もホトトギス。クサホトトギスのような名前なら良かったのに、鳥と同名だと少々紛らわしい。ホトトギスは国内にある約半数の10種類ほどが日本原産で、一般に鉢物で売られているのはタイワンホトトギスとの交配種が多い。林内でひっそりと咲く地味なホトトギスと違い、タイワンホトトギス=写真左=は見ようによってはかなりグロテスクとも言える花で、それがずらっと並ぶ様子は、やはり日本のものではないと感じさせる。最近までヤマジノホトトギスとヤマホトトギス=同右=は同じ種類と思っていたが、花茎の付き方や咲き方で別種だと知った。特に簡単な見分け方は、花びらが水平に開くのがヤマジノホトトギスで、反り返るのがヤマホトトギス。この特徴を覚えておけば間違いないらしい。
外来のホトトギスと日本のホトトギスを比べれば一目瞭然。小さくて地味でも、日本の四季に合わせて生きる巧みさ、強さ、派手過ぎないおくゆかしさと上品さがある。衣食住のいずれもが海外の影響を受けて変貌する日本で、守るべきものを見失わないよう努めたい。特に心は。
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