麻布大学大学院生で、代表として雌マウスの繁殖機能についての研究を発表した 浅場 明莉さん 26歳
「実験は頑張ったごほうび」
○…マウスの雄には求愛の歌があり、歌には系統がある。それならば、「求愛を受け入れる雌にも法則があるはず」と目を付けた。東急ハンズで購入したアクリル板を切り出して独自のケージを作るなど、ゼロからのスタートだった。研究を立ち上げ3年。雌は自身とは違う種類のマウスの歌を好むことを発見し科学誌で発表、瞬く間に報道が世間を駆け巡った。難しい繁殖や、畜産業での効率の良い人工授精の応用に格段に道が拓けた。
○…藤沢出身。幼い頃から「リケジョ(理系女子)」として才能を発揮する。小学生の時、友達が卒業文集で夢や思い出をつづる中、「チョークの粉を集めて復活させる実験」の結果を論文にまとめて発表。先生に褒められて自信をつけた。自宅では、絶滅危惧種に指定される「藤沢メダカ」の繁殖のため、卵がかえる様子に目を輝かせた。身近に生命の不思議に触れる環境があった。「生き物が好きなら」と先生に薦められて麻布大学へ進学。教養科目での膨大な暗記量にうんざりすることも多かったが、研究室への所属後は「やっとやりたいことに出合えた」と充実を感じた。
○…研究に没頭するため、現在は実家を出てシェアハウスで生活。世代も職種も違う人々との交流で生まれる刺激は大きい。研究者の顔から一変、休日は料理をしたり、着付け教室に通ったりと自分磨きも忘れない。「同じ一本の帯から何通りもの結び方が生まれる感じは実験に通じるものがありますよね」と、やはりリケジョの顔も覗かせる。
○…「求愛活動は人間にも通じる部分」と動物のコミュニケーションの大切さを強調する。現在は、マウスの求愛の研究を行うポルトガルの施設への留学に思いを馳せる。「論文などデスクワークは苦手ですが、この後に実験ができると思うと頑張れる。実験はごほうびです」と笑顔。アクリル板から始まった研究の道は、まだまだ終わらない。
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