町田市立博物館より43 鼻煙壺(びえんこ)の「裏側」 学芸員 山口 佳美
作品を展示するときには、必ず事前に作品の状態を確認します。貴重な作品を安全に展示するために、事前チェックは学芸員の大切な仕事のひとつです。筆者が今回チェックした作品は中国・清時代(18〜20世紀)に作られたガラス製の鼻煙壺(びえんこ)です。11月6日(水)〜17日(日)まで町田市民ホールのエントランスで開催する「町田市立博物館ガラスセレクション 鼻煙壺」展にて展示する作品の状態を確認しました。
そもそも「鼻煙壺」とは何かというと、「嗅ぎたばこ」という粉末状のたばこを入れるための容器を指します。ヨーロッパから中国に嗅ぎたばこが伝えられたのち、中国においてもさまざまな素材で嗅ぎたばこ入れ、すなわち鼻煙壺が作られるようになりました。今回展示するのはすべてガラス製の鼻煙壺で、ほとんどが手のひらサイズの小さな作品ですが、そこに凝縮された高度な技には驚くばかりです。
さて、このガラス製の鼻煙壺のチェックにあたり、とくに注意深く見たのは作品の底の部分です。これはもちろん底の状態が作品の安定を左右するからなのですが、同時に、底のような作品の「裏側」には、しばしばその作品にかかわる重要な情報が隠れているからでもあります。例えば、今回チェックをするなかで、底に高台(こうだい)と呼ばれる足のあるものと、平坦に削ってあるもの、文様が彫り出されているものなど、底の形状にいくつかのバリエーションがあることに気がつきました。ささいな違いのように思えるかもしれませんが、このような「裏側」に残る特徴は、実は作品がいつ・誰に・どこで作られたのかを考えるうえで大切なヒントになり得るものなのです。
今回の展覧会においてガラス製鼻煙壺の「裏側」をお見せすることはできませんが、底の部分がどうなっているかを想像しながら、じっくりと作品を鑑賞していただけたら嬉しいです。会期中には学芸員によるスライドトークも行います。入場無料、写真撮影も可能です(三脚・フラッシュ不可)ので、ぜひお気軽に足をお運びください。■同展の問合せは【電話】042・726・1531
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宮司の徒然 其の137町田天満宮 宮司 池田泉12月21日 |
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