1970年代の三保ダムの工事を記録した8ミリフィルムが、あつぎ郷土博物館(厚木市下川入1366の4)に寄贈され、活用に向けた整理が始まった。タイトルは「湖底のふるさと」。223世帯が移住したダム事業で、故郷を後にする住民の声や工事関係者の横顔を収めている。
撮影した代田則高さん(厚木市)は昨年12月に80歳で他界。その直前に「地元のために」と寄贈を思い立ったという。
代田さんは若い頃に趣味で8ミリ撮影を始め、当時暮らしていた川崎市の祭りや運動会などを撮っていた。50年ほど前に友人と相模線をテーマにしたドキュメンタリー制作に取り掛かり、国鉄とも交渉しながら1本の作品を完成させた。
精力的に山北へ
ダムの建設を知ったのはこの頃。車に機材を積んで山北に通うようになった。映像は引っ越してゆく人や抗議活動をする住民、工事現場でうなる重機や竣工式なども記録。湛水により湖底に沈む茅葺き屋根などの集落や、新しいダムのほとりで観光振興に取り組む人々も収めている。
数年間にわたる撮影に同行したのが長女の雅子さん(55)だ。「撮影当初は抗議活動中の方から『(撮っても)無意味だからどけ』などと怒られた事もありました。子ども心に何で父はこんなにペコペコするんだろうと。何度も通ううち『ちゃんと撮って』という声に変わり、お茶を振る舞われるようになった」。年配の女性から、山菜を手渡され「ここで採れるのは最後だから味わって食べて」と涙していた事が忘れられない。「ダムが皆のためになるとはいえ、代々暮らしてきた土地を去るのはつらいはず、撮影して残してあげたい」。それが代田さんの口癖だった。
自宅に現像用の暗室も備え、動画と別に録った音声を組み合わせる編集にも没頭。BGMやナレーションを巧みに組み合わせて本格的なドキュメンタリーに仕上げた。「湖底のふるさと」は生前DVDにして町関係者や知人に配った事もあったが、その存在を知る町民は少ない。
上映を目指す
気軽に撮り、ネットで公開できる昨今について、代田さんは「便利なせいで人と人とのふれあいが減った」とこぼしていた。一方でユーチューブに公開中の動画「相模線」は5万回再生され、コメント欄には感謝の言葉が連なっている。
同館では収蔵品を整理し始めており、劣化防止などの処理の後に上映などの活用も検討中。予定が決まり次第、公式ページで伝えるという。
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