青葉区奈良在住の詩人、草間小鳥子さん(33)が詩集『あの日、水の森で』(土曜美術社出版販売)を10月25日に出版する。草間さんは2018年に「詩と思想」新人賞を受賞。その副賞として今回商業出版に至った。
「待っても待っても戻らないひとがいるとき
あなたは気づくだろう
旅に出たのではなく
みな帰っていったのだ」
『あの日、水の森で』「あなたの知らないふるさとが」より一部抜粋
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詩集は「失くしたもの、会えなくなった人に森を通ってもう一度会いに行く」ことがテーマ。どこか切なさがありつつも「希望を感じる」詩になっている。そのほとんどが書き下ろしで、受賞作「耳畑」を含む28編の詩がまとめられている。新人賞の受賞決定以降、約2年間で創作した。
「耳畑」は、子どもが3歳の時に執筆した詩。生まれつき小耳症だった息子の治療法として医師から、子ども本人の肋軟骨で耳を再建できる方法を告げられた時の気持ちを残しておきたいと綴ったものだ。
「それまで耳を作れるなんて知らなくて。耳はあくまで聞くための手段で、多様な人がいるのが当たり前。かわいそうとか、社会はこうと、思い込むのは危険なんじゃないか。いろんな人がいることを想像したいと思った」と振り返る。
詩は、医療を民話のように記した斬新な語り口などが評価され受賞、今回の出版に。詩集のジャンルでの商業出版は非常に狭き門とされることから「本を出してもらえ嬉しい」と笑顔を見せる。
「人に残る詩」目指して
草間さんが詩を書き始めたのは7年ほど前。当時、会社勤めをしていたが、過労でうつ病に。長い文章も読むことができず「これなら」と手に取ったのが、金子みすゞの詩集だった。その後、自身で書いてみようと創作し入選したのが詩人としての活動の始まりだ。
自分に響く詩と出合い、助けられた経験があるという草間さんは今も「詩は自分の機嫌を取る方法のひとつ」と話す。
20年以上青葉区で暮らし、奈良山公園なども創作の場のひとつ。「区内で生活し、育児する中で詩が生まれた」と話すように、地域で感じ取ったインスピレーションが詩に散りばめられている。「具体的な地名は出てこないが、イメージを抽象化することで読む人に届いたら」と語る。「母が児童文学作家で、大人になっても覚えているような作品に憧れていた。読んだ人に一筋の言葉が残り、その人の経験となって思い出すと『元気がでるもの』『大丈夫と信じられるもの』になれば」と願いを込める。
区内ではブックファースト青葉台店、有隣堂たまプラーザテラス店で販売されるほか、オンラインでも購入できる。ハードカバーで2千円税別。
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