本紙では新年の幕開けにあたり、林文子市長にインタビューを行った。市長は新型コロナウイルス感染症対策に最優先に取り組む姿勢をみせつつ、横浜の成長を見据え市民、事業者とともに歩みを進める意欲を語った。IR(統合型リゾート)誘致については継続する考えを示し、市民の理解を求めていくとした。(聞き手/本紙・北原健祐)
--新年の施策について、多くの関心は新型コロナウイルス感染症対策です。
「今年は、ウィズコロナ社会における安全・安心な暮らしと横浜の将来にわたる成長のため、市民、事業者の皆様とご一緒に、力強く歩みを進めていく一年。引き続き、国や県、関係機関とも連携し、『感染症対策の強化』と『経済再生』の両立に最優先で取り組んでいきます」
--まず、医療面の具体策は。
「医療対策としては、これまで、市民の皆様には、身近な医療機関での検査委託の拡大を進めてきましたが、今後は、『休日急患診療所』や『夜間急病センター』の診療・検査体制を強化し、休日や夜間でも安心して診察が受けられるようにしていきます。また、24時間対応の『感染症コールセンター』についても、1月1日から現在の50回線から80回線に増やし、市民の皆様からのご相談にこれまで以上にスムーズに対応していきます。
引き続き、市内の医療機関の皆様にご協力いただき、日常の医療と両立させ、重症・中等症用の病床の確保や、検査体制の充実に取り組んでいきます」
事業者、雇用支える
--一方、経済の停滞が心配されますが。
「経済対策としては、中小企業の皆様を対象とした特別経営相談窓口での相談対応や、実質無利子融資による資金繰り支援などを継続し、事業継続と雇用の維持をご支援していきます。実質無利子融資メニューなどのこれまでの実績は、11月末までに、全体で2万件を超え、4300億円にのぼり、多くの中小企業の皆様にご活用していただいています。
雇用対策にも全力で取り組みます。引き続き、困難な状況にある方々への支援として、約430人分、総額5億円規模の緊急雇用創出事業に取り組んでいます。就職セミナーも、リアルでの開催に加え、オンライン開催も行い、より多くの方々にご参加いただきます。
これまで取り組んできた『くらし・経済対策』を継続し、これからも切れ目なく必要な対策を行い、横浜の街に活気と賑わいを取り戻せるよう力を尽くしてまいります」
IR、経済効果を強調
「アフターコロナに重要」
--IR(統合型リゾート)誘致は継続していきますか。
「横浜市が目指す日本型IRはカジノだけではなく、世界レベルのMICE施設やエンターテインメント施設、レストランやショッピングモール、多彩なホテル群が集まった統合型リゾートで、観光や地域経済の振興、財政の改善など、これまでにない経済的、社会的効果が見込まれます。これは横浜市域のみならず、他地域への波及効果も期待されます」
--新型コロナで事業環境が変わりましたが。
「生産年齢人口の減少に伴う税収減、超高齢社会の進展による社会保障費の増加、学校等の公共施設の保全・更新費への更なる対応など、市の抱える課題を解決する重要な方策の一つとしてご提案しているのがIRです。コロナ禍による観光業界へのダメージは深刻なものになっています。中小企業も例外ではなく、飲食店も客数が減り、大変な状況です。ですから、現状をお支えする『ウィズコロナ』の施策が大切なのはもちろんですが、コロナ収束後の『アフターコロナ』として重要となる施策です。
ポストコロナでは、IRは観光の復興と経済回復の起爆剤になると考えており、今やるべきことをコツコツと進めていきます」
--根強い反対から、住民投票やリコールの動きもあります。
「住民投票やリコールという直接請求の運動はIRに関しての一つのお考えですので、ご意見を真摯(しんし)に受け止めながら、法令等に基づいて適切に手続きを進めていきます。
一方で、IR=カジノというイメージが先行していますので、その内容をさまざまな手法で丁寧に情報発信やご説明することにより、市民の皆様にご理解いただけるよう努めていきます」
特別自治市の実現を
--特別自治市実現に向け、積極的に取り組んでいます。
「大阪市で実施された『大阪都構想に関する住民投票』を契機に、大都市のあり方への社会の関心が高まっている今こそ、それぞれの地域にふさわしい大都市制度を実現することが必要です。ポストコロナ社会において、力強い経済の回復と活力ある地方を創るためにも、大都市制度の見直しは急務だと思っています。他の指定都市とも連携しながら、国に対してさらに力強く特別自治市制度の立法化を要望していきます」
--今年も市内ではさまざまなイベントが予定されています。
「5年目を迎える『ガーデンネックレス横浜』を、春と秋に開催し、花と緑に親しむ機運を2027年の国際園芸博覧会へつなげていきます。夏に開催する『東京2020オリンピック・パラリンピック』、3年に1度のダンスの祭典『Dance Dance Dance @YOKOHAMA 2021(仮称)』に向け、しっかりと準備を進めています。
また、みなとみらい21地区では、春に神奈川大学の新キャンパスがオープンし、桜木町駅前と新港ふ頭を結ぶロープウェイが運行を開始するなど、街に新たな賑わいが生まれます。
さらに、世界最大級の音楽アリーナ『Kアリーナ』や、ホテル、オフィスビルの建設も進みます。関内・関外地区や郊外部のまちづくりにも取り組んでいきます」
市長選「考えられず」
--今夏が市長選です。現時点で出馬の意欲は。
「今はまったく考えていない、むしろ考えられない状態です。まずは新型コロナウイルス感染症への対応、それに伴う市内経済の再生に全力を尽くすとき。横浜のために必要な施策を、精一杯進めていきたいと思います」
--最後に、市民へのメッセージをお願いします。
「今年は、ウィズコロナ社会における安全・安心な暮らしと横浜の将来にわたる成長のため、市民、事業者の皆様とご一緒に、力強く歩みを進めていく一年です。
市民の皆様お一人おひとりの健やかな暮らしと横浜の未来のために、今年も全力で取り組んでまいります」
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