日中国交正常化から9月29日で50年を迎えた。国内各地で節目を祝うイベントなどが開催される一方で、両国の政治的関係は良好とは言い難い。そんな中、区内では日中間の相互理解を深める団体が活動している。さまざまな交流の場を設けながら、関係改善に「草の根」から貢献を続けている。
日本と中国は1972年9月29日、日中共同声明に調印し、国交を正常化。声明文には主権及び領土保全の相互尊重などが掲げられている。
相互理解が不可欠
しかし、「両国の関係は友好から対抗に変わってしまった」と話すのは、日本中国友好協会神奈川県連合会会長を務める大森猛さん(78)だ。大森さんは、戸塚を中心とした横浜西南支部の支部長代行も兼任する。
同協会は約70年前の1950年に結成され、国交正常化のための署名活動などを行ってきた。現在は民間レベルでの交流が必須とし、中国の歴史・言語・文化などを学べる映画鑑賞会や歴史講座を開催するほか、老若男女問わず受験者が集まる「中国百科検定」を実施。「草の根から」の中国への理解を促すきっかけ作りに注力する。大森さんは「互いを知ることが絆を深めるが、政府間においては最悪の状況。正常化から50年たったいまも傷跡は残っている。改善したい」と語る。
「支え合いが大切」
国交正常化を機に始まったのが「中国残留孤児」の帰国。区内を中心に帰国者の支援を行うのがユッカの会だ。代表の中和子さん(80)は、「国交正常化は残留孤児の方々にとって、非常に大事な出来事だった」と話す。
同会は、帰国者の学習・生活支援などのために1988年に設立されて以来、生活に寄り添ってきた。現在は、それに加えて地域との交流活性化に努める。「国や性別などは関係ない。支えあいが大切」。
必要なのは「長期的な支援」帰国者「戦争はいけない」
中さんによると国交正常化から30年以上が過ぎた2007年に成立した法律によって、現在の帰国者の生活は「安定している」と語る。
しかし帰国者の高齢化という新たな問題が発生。同時にコロナ禍により対面での活動が制限され、帰国者同士の情報交換や日本語を話す機会が少なくなったことで、「日本語を忘れてしまったり、日本食の味が合わず施設入居に抵抗感があったり」する事態が起こっている。日本の高齢化とは異なった複雑な問題が表れ始めているようだ。「今後は言葉や文化の壁だけでなく、老後を楽しく過ごすための『長期的な支援の充実』が求められる」と指摘する。
「両方が母国」
現在、市の調べでは戸塚区内に住む中国人の数は、9月末までで1791人。厚労省によると、日本に永住権を持つ帰国者は8月末までで約6700人におよぶ。このような状況を踏まえ、相互理解を促進させるため、中さんも大森さんと同じく「草の根からの活動・交流」を方針として掲げている。
ユッカの会に参加する区内在住の帰国者・菅原幸子さん(78)は、自らを育ててくれた中国、帰国後の生活を支えてくれた日本両国に「本当に感謝している。どちらも私の母国」と語り、国交正常化50周年に対して喜びをあらわにした。
それだけに日中関係悪化や、連日報道されるウクライナ侵攻のニュースには胸を痛め、危機感を募らせている。「戦争をしてはいけない。対立しあうのではなく、互いに協力しあうような関係であってほしい」と力強く訴えた。
![]() 会について語る中さん
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