高齢者を狙った悪質な特殊詐欺。中原区内での5月13日時点の年間被害認知件数は10件(昨年同期比マイナス6件)で、被害総額956万円。うち7件がキャッシュカードをだましとる詐欺で、中原警察署では注意を呼びかけている。
近年増加している「キャッシュカードすり替え型」。金融機関や区役所職員、警察官などをかたる犯人が被害者宅に電話をした上で、近くで待機している仲間を自宅に向かわせ、言葉巧みにキャッシュカードを偽物とすり替えて盗む手口だ(左図参照)。
傾向として、入電から被害発生までの時間が短いことが上げられる。平均すると、入電からカードの手渡しまで2時間以内に発生するケースが75%。その後、ATMでの現金引き出しが1時間以内に行われるケースが70%だ。中原警察署の田島充署長は「短時間で犯行に及ぶことで被害者に考える隙を与えないようにしている」と話す。
コロナ禍もあってか、今年の特殊詐欺の件数は減少傾向にある。神奈川県内では5月13日時点で397件(昨年同期比マイナス283件)。うち、キャッシュカードすり替え型は75件(同マイナス195件)。大幅に減少しているが、75件のうち31件が川崎市内で発生しているという。近隣の横浜市では32件。川崎・横浜での発生数が高く、より一層の警戒が必要だ。
「お金」はまず疑う
特殊詐欺の被害に遭わないためには心構えと日頃の対策が重要になる。田島署長は、電話機を留守番設定にすることや、電話口で「お金」や「キャッシュカード」と言われたら疑う必要性を呼びかける。
下火だった「オレオレ詐欺」の発生も確認されるように。田島署長は「皆さん、自分が育てた子どもを信じましょう。あなたの子どもはお金を無心しません」と話す。家族で合言葉を決めておくことも推奨する。
中原署では特殊詐欺対策として、3年前にプロジェクトチームを発足。分析や予兆電話があった際の巡回や職務質問などを担う。それに加え、コンビニエンスストアや金融金庫の協力もあり、今年は8件を阻止。2人の犯人を検挙した。
田島充署長は「今はキャッシュカードのすり替え型が多いが、時代や情勢に合わせて犯人は手口を変えてくる。どんなときも、電話で金銭の話になったら、一度電話を切って中原署に相談してほしい」と呼びかける。