徒然想 連載289 花のお寺 常泉寺 住職・青蔭文雄
今月は、一渧(いったい)をなめて大海の潮をしり、一華(いっけ)を見て春を推(すい)せよ、です。
出典は、鎌倉、日蓮(にちれん)、『開目抄(かいもくしょう)』。
意は、一滴の水をなめて大海の塩を知り、一輪の花を見て春の訪れを推察せよ、ということです。
一滴の水に大海の塩を知り、一輪の花に春を知るように、一つの事象や事例によってその全体を知ることができ、知恵のすぐれた人間は、一を聞いて万を悟り、一を聞いて全部を理解し、一例によってその本質を見極める事ができ、すべての説明を聞かずとも判断できるように修行をしなさい、と師は教えています。
当然とされているものは、くどくど説明しないで一例をあげてよしとするのが、世の中の常です。
師の著『法華取要抄(ほっけしゅようしょう)』に「以一察万抄(いいちさつばんしょう)」という文言があります。「以一察万」とは、「一(いち)を以て万を察せよ」と読み下し、一例によってすべてを理解せよ、と教えています。
諺のなかにも「一を以て万を知る」とか「一を聞いて十を悟る」、「一を聞いて万を知る」などがありますね。
桃蹊庵主 合掌
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