およそ50年にわたり、まちづくりの意義や地域資源の尊さを発信してきた府川栄一さん(69)が、自ら編集長を務める「あしがら里山だより」の発行継続を断念した。10年来患う難病が進行し「体力気力とも限界」という。
府川さんは40代中ごろから原因不明の背中の痛みに悩み続け、52歳で難病「強直性脊椎炎」が判明した。首や背中、関節が痛み、硬直化するなど症状は全身に広がり、54歳で仕事のリタイヤを余儀なくされた。
一級建築士の府川さんは仕事では味わえない自然や歴史、文化に魅せられてまちづくりに興味を持つようになり、あしがら青年会議所や商工振興会でまちづくりの活動に参加。86年には「大井まちづくりコミュニティ研究会」を発足させ、行政とも連携して町に点在する地域資源の掘り起こしや情報発信などの活動を始めた。この頃の町では振興会のメンバーらが「ひょうたん祭」の前身となる「納涼夏祭りエキサイティングサマーおおい」を開始。府川さんもこの輪の中にいたが「自然と歴史、文化で地域に貢献したい」と独自の活動に取り組み始めた。
地域資源に情熱
研究会の活動が20年に及ぶと次第に組織が弱体化。難病を抱えながらも意欲を失わない府川さんは2005年に、振興会で活動を共にした自動車整備販売業、藤沢仁さん(74)=(株)藤沢自動車の支援を受けて『ふるさと歳時記新聞』を創刊。110号の発行を通じて1市5町の地域資源を紹介した。
14年には通院する足柄上病院の廊下で見た西丹沢を描いた湯川礼士さん=山北町中川=の水彩画に触発され、A4サイズ4ページ版の季刊『あしがら里山だより』を創刊。この間、A3判冊子『あしがら探訪シリーズ』を6年間で9巻発行し、足柄で巡礼気分が味わえる「かみごおり七観音巡り」ツアーを開催、提唱するなど病床でパソコンを操作しながら活動を続けてきた。
七観音巡り
府川さんは9月1日発行の「あしがら里山だより」30号で「体調不良につきこの号をもってまちづくり活動はすべて終了とさせていただきます」と活動終了を宣言。これまでの刊行物を記録し、集大成ともいえる「かみごおり七観音巡り」を1面で再掲載し、「七観音巡りで町おこしを!」と結びの言葉を綴った。府川さんの身の回りを世話している大正11年生まれの母・晶子さん(95)は「期日をよく守って発行してきた。よくやってきたと思います」と話していた。
無料で進呈
府川さんが編纂した『あしがら探訪シリーズ』のうち【1】「巡礼の路(上郡寺社巡り)」、【2】「川辺の輝(酒匂川検定)」、【3】「観音の姿(上郡観音巡り)」を無料で進呈します。希望する方は足柄編集室(【電話】0465・35・3980)へ。
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