社会福祉法人ばなな会が運営する認知症高齢者介護施設「のんびりーす等々力」で、認知症患者の表情を分析し心身状態を読みとる取組みが始まった。日清オイリオグループ(株)と女性狂言師が協力し、将来的には認知症患者の生活の質向上などに役立てたい考えだ。
ばなな会では6年前から、自ら運営する介護施設で狂言教室を行ってきた。講師は和泉流宗家・和泉元彌さんの姉で女性狂言師の十世三宅藤九郎さん。入居者や家族らに楽しんでもらうとともに、地域住民を招き認知症への理解を深めてもらうことが目的だ。
その教室に注目したのが、同会に介護食を販売している日清オイリオグループ(株)。中鎖脂肪酸の認知症予防への有効性を研究している同社が、昨秋から取り組む「認知症患者の表情を分析する研究」をこの教室で試したいと持ちかけ、今回の取組みが決まった。
5パターンで分析
「認知症になると気持ちが表情に出にくくなる。それだけに、わずかな変化を知ることができれば心身状態などを把握することに繋げられ、生活の質向上や認知症ケアに役立てられるはず」と同社の担当者。この取組みでは、入居者の表情を動画撮影し、笑顔・真顔・驚き・怒り・悲しみの5パターンを集計。2時間で約7〜8000コマを分析し、表情の変化の回数などを調べる。
「認知症への理解につなげたい」
一役買うことになった狂言師の十世三宅藤九郎さんは「狂言は笑いを提供する伝統芸能。まずは皆さんに楽しんでもらい、結果、認知症への理解や予防などに役立てれば嬉しい」と意欲的だ。これまで行ってきた教室でも、普段あまり表情を変えない認知症患者が喜んだり、歌詞を口ずさんだりする素振りも見られたという。
ばなな会の担当者は「認知症患者に対する社会からの偏見もまだ少なくない。この取組みにより多くの方に認知症を理解してもらい、患者が社会にどう関わっていけるかを探るきっかけになればいい」と話す。
なお、日清オイリオグループ(株)では、この取組の成果を来春に開催される「日本認知症ケア学会」で発表する予定という。※狂言教室の一般参加希望者は【電話】044・433・4651へ。
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