市内大船の洋菓子店「パティスリー カルヴァ」オーナシェフの田中二朗さん(33)が、来年アメリカで行われる製菓の国際コンクールに日本代表として出場することになった。今月、大阪で行われた国内選考会では、正確な技術と独自の発想が高い評価を受けた。田中さんは「もちろん世界一を狙います」と次なる舞台に意欲を燃やしている。
前回の雪辱果たす
田中さんが出場を決めたWPTC(World Pastry Team Championship)は2年に1度、アメリカで開催される製菓の国際大会。各国3人1組のチーム制で争われ、世界中からトップパティシエが参加する、言わば「製菓のワールドカップ」だ。次回は来年、ラスベガスを会場に実施される。
その日本代表を決める国内選考会は3月6日と7日の2日間、大阪で開催された。「チョコレート細工」と「アメ細工」の2部門で、全国から書類審査により選ばれた5人のパティシエたちが、各部門1つの日本代表の座を争った。
田中さんは「アメ細工」部門にエントリー。前回大会の選考会では惜しくも代表の座を逃していただけに、直前の2カ月間は店に泊まり込んで練習を重ねるなど、雪辱を期して臨んだ選考会だった。
実は田中さんには「秘策」があった。それは飴細工の性質上難しい「時間と動き」を表現すること。そのため飴細工の中央部分に砂時計のような仕組みを作り、そこを時間とともにシロップが流れ落ちるようにした。
「時をかける鳳凰」と名付けられた作品は、テーマ性、芸術性、完成度、作業、オリジナリティという全ての審査項目で他の選手を大きく上回り、「圧勝」で念願の日本代表の座を掴んだ。
「大船から世界へ」
大船で洋菓子店を営む両親の間に生まれた田中さんだが「お菓子は好きじゃなかったし、この世界に進むつもりは全然なかった」と言う。高校時代は野球に打ち込み、強豪・横浜高校で甲子園を目指していた。しかし3年生の春の大会の直前に怪我をして、メンバーから外れてしまう。
目前の夢を逃し、ぼんやりと将来のことを考えていた時、父・良一さんが次の日の仕込みのために深夜黙々と仕事をする姿を目にする。「初めて父の姿が格好良く見えた。男が菓子を作るのもいいじゃないか、と」。父と同じ道を進む決意を固めた田中さんは高校卒業後、東京プリンスホテルに入社。01年にはホテル時代の先輩で、世界大会で多くの優勝を誇るトップパティシエ川村英樹さんが吉祥寺に出店した「アテスウェイ」の立ち上げに加わり、6年間勤めた後、フランスに渡って修業を重ねた。
そして帰国後の09年、兄の聡さんと、両親がかつて洋菓子店を営んでいた場所に「カルヴァ」を開店。瞬く間に人気店となった。
次なる目標は「もちろん世界一」だ。「両親の代から支えてくれた地元の皆さんに恩返しがしたいし、その自信もある。ここ大船から世界を目指します」ときっぱり。その視線は世界の頂を見据えている。
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