公益財団法人鎌倉風致保存会(兵藤芳朗理事長)は12月25日、創立50周年を迎える。「御谷騒動」をきっかけに緑地保全に大きな功績を残している同会。兵藤理事長は「これからは近代以降の建築物保全にも力を入れ、鎌倉らしい街づくりに貢献したい」と意気込む。
鎌倉風致保存会が発足した当時は東京オリンピックが開催され、東海道新幹線・名神高速道路が開通するなど、日本列島全体が経済成長に沸いていた。
その一方、別荘地として知られていた鎌倉では1960年頃から宅地造成ブームが訪れ、ブルドーザーが木々をなぎ倒し、山を開く様子は「昭和の鎌倉攻め」と呼ばれるほどだった。
1964年、鎌倉の「象徴」ともいえる鶴岡八幡宮の裏山「御谷」にまで開発の波が押し寄せると、市民が立ち上がり鎌倉文士と呼ばれる著名人らも賛同。大佛次郎は新聞に寄稿した開発反対のエッセイのなかで、市民から寄付を募り、残したい土地や建物を購入、保存する英国のナショナル・トラスト運動を紹介した。
結果的にこの「御谷騒動」は全国的な署名活動に発展し、その反響で同年12月25日、「財団法人鎌倉風致保存会」が設立され、募金活動を開始した。1966年、御谷山林約1・5haの買い取りに成功し、日本におけるナショナル・トラスト運動の先駆けとなった。
こうした鎌倉市民の動きは当時のマスコミでも大きく取り上げられ、古都の歴史的景観を乱開発から守るため「古都保存法」が超党派の議員立法で制定された。世論が国会を動かした最初の「世論立法」とされている。
再び表舞台へ
10年ほどの休止期間を経て1979年に活動を再開。1983年には大佛次郎の茶亭保存に乗り出した。翌年10月には十二所果樹園の一部を借り上げ、2006年1月には果樹園全体の5haを買い取り、1999年3月には笹目緑地1・2haを、保存することになった。
また96年からは「みどりのボランティア」を募り、課題となっていた山の手入れ活動を始めた。98年からは会員制度を採り入れ、2011年、財団法人から公益財団法人へ移行し13年4月、扇ガ谷「旧坂井邸」の土地建物2600平方メートルの遺贈を受け、事務所を移転させると、先月に国の登録有形文化財に登録された。
現在約450人の会員を中心に各種事業を行い、年間約130回、延べ2千人を超えるボランティアが緑地保全活動に参加。同会が所有するのは4カ所計約8haの土地と建物1棟になった。
兵藤理事長は「これまで通り緑の保全を進めながら、50周年を節目に、街中の景観、特に失われつつある近代以降の鎌倉らしい建造物を残していく活動にも力を入れていきたい」と話した。
コンサート・写真展も
「鎌倉の風景絵画・写真展」が12月16日(火)から22日(月)まで、きらら鎌倉地下ギャラリーで開催される。午前10時から午後5時まで(初日は午後1時から、最終日は午後4時まで)。
また記念コンサートが12月27日(土)、きらら鎌倉ホールで。テノールの秋山徹さん、ソプラノ村田望さんらが出演。午後6時10分開場、6時30分開演。前売り2千円、当日券2500円。問い合わせは同会【電話】0467・23・6621へ。
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