乙女が心をときめかせる、バレンタインが今年もやってきた。そんなムードを盛り上げる特別企画「愛は言葉だ!文豪のハートにふれるバレンタイン」が鎌倉文学館で2月14日まで開催中。文豪たちの愛にまつわる作品展示など見所が盛りだくさんだ。中でも一番人気は文豪の作品や手紙から言葉を引用した「愛の言葉おみくじ」。学芸員の山田雅子さんに話を聞いた。
恋は心を迷はせる
記者―年明けからメディアを騒がす、道ならぬ恋の話題。文豪にもそんなエピソードってあったりするんですか。
山田―結構多いですよ。里見弴や高見順も浮気と愛人の話は有名です。中でも激しかったのは岡本かの子でしょうか。芸術家・岡本太郎の母親でもある彼女は、夫に浮気された一方で、自分も愛人を作り、息子もいる自宅に住まわせていました。おみくじの「恋は心を迷はせる」は昭和15年に発表した小説「生々流転」から引用した文言です。主人公が三角関係など複雑に絡み合った恋愛に身を置く中で出てきた一節ですが、胸をつく鋭い言葉です。
そんなことよりも君のことを考へてゐる方がよつぽど楽しいんで困つちやふ
記者―子どもと愛人と同居…経験の浅い私には少し刺激が強すぎます!もう少しほっこりしたエピソードはないんですか。
山田―宮崎駿監督が映画化して話題になった「風立ちぬ」の作者・堀辰雄が恋人の矢野綾子へ送った手紙は、なかなか情熱的で、女性にも人気があります。おみくじに採用した「そんなことよりも君のことを考へてゐる方がよつぽど楽しいんで困つちやふ」も綾子へ宛てた手紙の一文なんですが、この前文に仕事の締切の話をしているんです。「仕事なんかよりも君のことが大事」と言ってくれるところに愛情を感じる、と女性に人気があります。
本人は病弱でお金もあまり持ってなかったのですが、裕福な家の女性と恋仲になって援助してもらうことが多かったようです。チャーミングな言い回しの手紙からも分かるように母性本能をくすぐるタイプだったので、やはり女性からはモテたのではないでしょうか。
愛されてゐるといふことに気がつかないほどに愛されてゐるね
記者―結婚、結婚、また結婚…昨年から友人の結婚ラッシュに遭遇しています。(まだ全然予定はありませんが)将来結婚した時のために、夫婦円満の秘訣を知りたいです。
山田―川端康成が昭和6年に発表した小説「結婚の技巧」は、少しひねくれていますが、一つの夫婦のかたちを考えさせてくれる作品だと思います。上手くやっていくには不安があった方が良いと考える夫は、「いつ別れるか分からないから」と妻を突き放す発言を頻発します。それでも、最終的には円満に収まるんですよね。仲が良くてもマンネリはよくない、ということもあるかと。おみくじには妻視点の一文「愛されてゐるといふことに気がつかないほどに愛されてゐるね」を抜粋しました。
記者―大変参考になりました。まずは………相手探しから頑張ります!
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