被災地へ「ちゃんちゃんこ」の寄付を企画した 平原 久子さん 林間在住 68歳
「余生」は誰かのために
○…これから冬を迎える被災地に暖かい「ちゃんちゃんこ」を送りたい―、その思いを形にするため、自らが主宰する和裁教室の生徒8人と共に活動をスタート。仕事や家事の合間に皆でチクチクと縫い続け、5カ月をかけて目標の50着を完成させた。「ちゃんちゃんこは軽くて暖かくて、動きやすい。ぜひ被災地の方に使ってもらいたい」。喜んでもらう姿を思い浮かべ、にっこりと微笑む。
○…小学6年の時、「心臓弁膜症」という大病を患った。卒業は出来たものの、進学した中学校でも運動のできないもどかしさ、勉強についていけない悔しさから休みがちに。家の中で本に没頭する日々が続いた。「世の中を斜に構えて見るようになったのは、この時の影響」と苦笑を浮かべる。家の農業を手伝うこともままならず、両親を恨んだこともあった。「このままでは就職も結婚も出来ない」。実は和裁は、自分が生きていくための苦渋の選択だったという。それが今、多くの人の心と身体を温めるために活かされている。
○…43年前に、見合いで望外の結婚。3人の子宝にも恵まれた。自らが病気がちだったこともあり、食へのこだわりから35年前にコープかながわの組合員に。その後、平和運動などにも従事するうち、「コープ狂」と名乗るほど活動に没頭。現在もエリアコーディネーターとして、地域における食の安全や災害対策などにも奔走する。ただ、熱中するあまり家事がおろそかになることも。「外での活動もいいけど、家の中でも活動して」と、子ども達には嫌味を言われてしまうとか。
○…病気によって結婚も育児も人との出会いも諦めていた青春時代。それが、気付けばその全てを手に入れた。だからこそ、今の人生を『余生』と言い切る。「40歳まで生きられるか分からないと言われながら、ここまで来られた。誰かのために生きなきゃ申し訳なくて」。その表情には一片の悔いも見当たらない。
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