横浜市 公共施設、保全費が重荷に 「白書」素案まとまる
横浜市はこのほど、学校や庁舎など約2千5百の公共建築物の実態をまとめた「横浜市公共建築物マネジメント白書」の素案を公表した。老朽化の状況や、維持に必要な多額の保全費の推計などが盛り込まれている。12月26日まで素案に対する市民の意見を募り、来春に正式な「白書」として公表する。
横浜市では、高度成長期だった昭和40年から50年代の急激な人口増加に対応するため、大量の公共建築物を整備してきた。特に人口急増期に建築された施設の延床面積は約600万平方メートルで全体の6割を占めている。また、市民利用施設や社会福祉施設、学校施設の延床面積は約520万平方メートルで、大阪や名古屋、神戸市など他の政令指定都市と比べても多い。今後市内の人口減少が想定される中、公共施設管理のコストは、財政の重荷になる可能性が高く、市の大きな課題となっている。
今回公表された白書の素案では、市民利用施設の年間利用者数や稼動率、維持費の状況などが試算されている。それによると、道路なども含めた市内公共施設の保全費は、今後20年間で約3兆4千億円に上るとしている。また、2012年度一般会計の保全費は約580億円だが、今後20年間は、年平均で約960億円になると推計している。
建物の保全コストを下げようと、市は決められた周期で修繕を行う「時間計画保全」ではなく、劣化に応じて早急な対応が必要な場合だけ修繕する「状態監視保全」を採用している。ただ、一部の施設や利用者らからは「点検で劣化が判明してから修繕するのでは遅い」との声も上がる。
市では12月26日まで、素案の内容や公共施設のあり方などについて市民から意見を募集している。市担当者は「市民に現状を理解してもらい、今後の課題について一緒に考えていきたい」と話す。市民の意見を参考にした上で、正式な「白書」を2013年3月に公表、4月以降は今後の維持管理の具体的な議論を進める。
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