新羽にある老人ホーム「きらり港北」で、毎日編み物に励んでいる女性がいる。今年で92歳を迎えた上野タヅ子さんだ。手編みのグッズを自然災害に遭った地などへ寄贈している上野さん。活動への想いを聞いた。
笑顔を届けたい
寄贈を始めたのは何十年も前のこと。当初は近隣の幼稚園や保育園などに送っていたという。その後は「遠方でも困っている人のため」と、震災などがあるたびに被災地支援を行っている。東日本大震災時には、福島の避難所で暮らす子どもたちが暖かく暮らせるようにと座布団を製作。2年かけて100個の座布団を仕上げたという。「子どもたちが笑顔になってくれれば嬉しい」
支援活動の原点は戦時中の体験。傷痍軍人の慰問に派遣された際に歌を披露。それを聞き、泣いて喜ぶ兵士たちの姿を目にし「兵隊さんがこんなに頑張っている。私も一生のうちに必ず誰かの役に立ちたい」と感化されたという。
現在は、豪雨被害に遭った熊本県への支援を準備中。「冬の寒さは元気を奪ってしまうから」と、ネックウォーマー作りに励む。11月の発送までに50個を作るのが目標。「苦しいときはその日を暮らすだけでも大変。ちょっとでも生活の支えになれるように頑張りたい」と話す。
父の言葉胸に
編み物との出合いは3歳の時。裁縫の講師だった叔母の指導で始め、小学生の頃には自分のセーターを編んで着ていたという。恩師に子どもが生まれた時「出産祝いに服を作ってと頼まれた」というエピソードがその腕前を物語る。
技術と同時に驚きなのはその継続性。「10代の頃から今日まで、休んだ日は一日もないわ」と80年近くその手を止めることなく編み続けている。きらり港北の大村直美理事長は「睡眠・食事・入浴時以外はずっと編み物をしている」と笑顔で話す。理由は父親の”一日一善”の言葉。幼少期から別れ際まで繰り返し受けた言葉を胸に「(起きないのが一番だが)災害があった時にいつでも届けられるように、毎日何かを作るようにしている」と想いを口にする。
手先を使う日々の努力の積み重ねは自身にも好影響が。92歳の年齢を感じさせない若々しさで施設ではいつも明るいムードメーカー。来館者へのお土産として布タワシを作ったこともあり、「出入口に置いておくと好評で、次々と手に取っていかれる」(大村さん)という。「スタッフさんのおかげで、好き放題やれているだけ」と微笑む上野さん。「周囲に喜んでもらえるのが一番。最期の時まで編み続けるのが目標なの」と少女のような笑顔を浮かべた。
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