横浜市 養護施設利用者に奨学金 高卒後の進学を支援
横浜市では今春から、児童養護施設の退所者を対象とした、奨学金支援プログラム「横浜版カナエール」を始める。行政の取り組みとしては全国初。高校卒業後の退所者の進学率は、経済面の問題などにより約20%にとどまっており、進路選択の可能性を狭めているのが現状だ。継続的なサポートにより、退所者の学業支援を目指す。
全国初の取組み
横浜市にある10カ所の児童養護施設では、約500人が生活しており、利用者は高校卒業時に退所しなければならない。市によると、毎年約30人が退所し、約2割が大学や短大などに進学するという。実父母からの経済援助は少ないケースがほとんどで、大半がアルバイトで学費や生活費を賄っているのが現状だ。高校卒業後の進学率は、全国平均の約70%に対し、退所者は経済的負担などにより約20%。中退者も多く、卒業する学生は14%だという。
市では、2012年10月から「施設等退所後児童のためのアフターケア事業」を開始。都内を中心に退所者の自立支援活動を行うNPO法人「ブリッジフォースマイル」(林恵子理事長)に委託し、交流スペース「よこはまPort For」(【電話】045・548・8011)=西区=の運営を行うなどしている。
月3万円を給付
今回のプログラムも同法人が11年から始めていた事業「カナエール」が原型。横浜版では、教員や看護師など就労に必要な資格を取得することを参加条件としており、面接などを経て6人の奨学生を決定する。奨学金は市民の寄付による社会福祉基金を財源に、一時金30万円と、卒業までの生活資金として毎月3万円が給付され、学校を卒業すれば返済は不要だ。第1回の応募は1月8日で締め切っており、2月中旬に内定者が決まる。
カナエールでは資金面での援助以外に、将来に対する「意欲」を重視する。自らの夢を語るスピーチコンテストへの出場が必須で、当日までサポートスタッフと活動をともにするプログラムが用意されている。
「他自治体に波及を」
同法人事務局の江澤貴美さんによると、これまでに東京で実施したプログラムは寄付を財源としており、資金力は不安定だという。「行政の支援により、今後の可能性も広がる。借金型に比べて、給付型の奨学金制度は全国的にも少ないので、これを機に他の自治体にも広がれば」と話す。市では今後も継続する方針で、実績をみて人数を増やすことも検討しているという。
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