横浜労災病院 感染症部 感染症チーフコンサルタント 城裕之氏
横浜市は64歳以下の新型コロナウイルスワクチン接種について８月初旬から予約を開始し、集団接種・大規模接種は16日から接種が始まっている。ただ、若年層の接種については、副反応を懸念する声も聞かれる。本紙では、港北区内の集団接種でアナフィラキシー等が発生した場合の対応を行う、横浜労災病院（独立行政法人労働者健康安全機構）の感染症部・感染症チーフコンサルタントである医師、城裕之氏に話を聞いた。
高い免疫獲得率
--現状のワクチンについて（ファイザー社製、モデルナ社製）、それぞれの効果は？
「発症予防効果はファイザー 95％、モデルナ 94％といずれも高い効果を示しています。重症化予防効果（ファイザー）も98％と高い有効率を示しています（データは国立感染症研究所『新型コロナワクチンについて、２０２１年７月15日現在』による）。デルタ株に対するワクチンの効果について、重症化予防効果は維持されていますが、発症予防効果は低下します。デルタ株が流行した米国ミネソタ州での報告では、有効率はモデルナ 76％、ファイザー 42％であり、ワクチンを接種したにもかかわらず発症する『ブレークスルー感染』のリスクは、ファイザーの方がモデルナに比べて増加していました。
免疫獲得率は接種者における中和抗体産生率で評価します。横浜市立大学のデータ（医療従事者１０５人／ファイザー）では、従来株に対して１回接種後57％、２回接種後99％でした。デルタ株に対する中和抗体産生率は、１回接種後37％、２回接種後97％でした。つまり、２回接種することによりデルタ株に対しても高い免疫獲得率を示しています」
--高齢者より若い世代の方が、副反応が強く出ると報道されていますが、一般的な副反応、および強い副反応とは、どの程度のものですか。またそれはなぜですか。
「ワクチンの薬剤に関する説明書に記載される副反応には『強い副反応』という言葉はないのですが、代わりに『重大な副反応』が記載されています。『重大な副反応』として記載されているものは、ショックとアナフィラキシーだけです。報道等でよく使われる『強い副反応』とは、発熱、頭痛、局所反応等の一般によく認められる症状の頻度が高いことを指しているのだと思います。
重症のアレルギー反応であるアナフィラキシーの発生は、７月11日の時点で、国内で１００万回接種当たり６件です（一般のワクチンでは１００万回に１回程度の発生率）。アナフィラキシー ３２５件のうち３００件は女性（93％）でした。アナフィラキシーによる死亡例はありません。60歳以上が31件であるのに対して、20歳〜39歳は１３５件あり、アナフィラキシーは、女性で若い年齢層に多く発生しています。新型コロナワクチンの副反応が強いと言われる大きな理由は、発熱の頻度が高いことだと思います。２回目接種後の発熱（37・５℃以上）は、ファイザー 38％、モデルナ 78％でした。さらに、38℃以上の発熱はファイザー 21％、モデルナ 62％でした。ファイザーについて、２回接種後の発熱頻度を年代別にみると、20歳代では50％であるのに対して、40歳代40％、60歳代15％、70歳代10％以下と年齢とともに低下します。ｍ-ＲＮＡワクチンは従来のワクチンに比べて強い免疫反応を起こすため、免疫反応が低下している高齢者では、若年者に比べて副反応が少なくなるのではないかと考えられます。
モデルナのワクチン特有の副反応として『モデルナアーム』があります。ワクチン接種後、数日から１週間経ってから、接種した腕に痒み、痛み、発赤、腫脹が出てくるもので（発生率は２％）、ほとんどがモデルナのワクチンで報告されています。遅延性の炎症反応であり数日で自然に治癒します」
--家で副反応が出た際の対処法は。また、港北区の集団接種会場で、労災病院が対応した副反応事例はありましたか？
「幸い、当院が担当した港北区での集団接種会場では、８月11日現在でショックやアナフィラキシーは経験しませんでした。副反応のうちで、一番辛い症状は、発熱、頭痛、局所の疼痛ですので、普段、ご自分が使い慣れた鎮痛解熱剤（アセトアミノフェン等）を使用してください。それらの症状も、通常は接種後72時間以内には消失します。接種後、１〜２日程度、仕事を休めるようにスケジュールを組んでおくと良いと思います」
※副反応に関する数値は、厚生労働省ワクチン分科会副反応検討部会のデータより引用
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