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港北区版 公開:2021年10月28日 エリアトップへ

【Web限定記事】ピンクリボン月間企画 女性特有のがんと検診〜私らしく輝く毎日を〜 港北区在住の脚本・演出家、鹽野(しおの)佐和子さんにインタビュー

社会

公開:2021年10月28日

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インタビューに答える鹽野さん
インタビューに答える鹽野さん

 10月は乳がんの正しい知識や検診を呼びかけるピンクリボン月間。乳がんは、早期に発見できれば治る可能性が高い病気と言われています。そのために検診が非常に重要です。自身のがん経験から創作劇を脚本・演出した鹽野佐和子さんのインタビューから自分の身体に目を向けるきっかけを見つけてみては。

 アメリカの大学で演劇を学んだ後、脚本・演出家として活動する港北区在住の鹽野佐和子さん。

 「母の介護のため札幌で過ごしていました。疲れていたので、お風呂に入ってマッサージをしていたんですよ。すると『あれ』って。2017年の12月でしたね。それまで体調が悪くなることなんて一切なくて、本当に突然。しこりがあって驚きました」

 しばらくし病院に行くと「ステージ3Cの乳がん」と診断された。

「好きな肌、私は胸を切りたくない」

 「『ステージ3Cだと標準治療や再建にはあたらない』と話すお医者さんもいて、どう治療したらいいのか迷いました。私は肌の色も白くて、胸は唯一好きなパーツなんです。全摘になれば胸を真一文字に切って縫い目が全部見えると言われて、胸を切ることは絶対に勘弁してほしかったので手術はしなくていいと考えていました」

 しかしその後、乳房の切除と再建を同時に行える新しい主治医と出会い手術を行った。「右乳房を全摘出する手術の後、リンパ節への転移も見つかって、通常は25回くらいなんですけど、私は33回放射線治療も行いました。1年半位経って皮膚も元に戻ってきました。皮膚の再生力が強いタイプみたいだったみたい」と笑顔を見せる。

 「初期治療を終えて、あとどれくらいか主治医に聞いてみたんです。『今のQOLが保てるのはあと5年くらい』と言われて、今のうちにやりたいことをやって会いたい人に会って、そういうことだなと考えました」

「私は脚本家」

 これからのことを考える中で乳がん治療について振り返ったという鹽野さん。「乳がんって色んな治療があって難しくしているなって思ったんです。ステージやタイプによって組み合わせが全く違ってパズルみたい。悩んだし、葛藤もあったけど楽しんだ自分もいて、私は脚本家で演出家なのでそれを形にしたいという気持ちが出てきて、『演劇にしよう』と思った時にタイトルが思いついたんです」

 早速脚本に取りかかった。主人公は40代の女性。「見た人が乳がんの治療について少しでもわかってくれたらいいな」と複雑な治療の選択肢や病気のリアルをメディカル・ラブコメディとして描いた。「医者と患者の出会いってとても重要。会ったその日に信じて命を預けるってありえないじゃないですか。でもそれを直観的に決めないといけない。ある種結婚相手みたいな、恋愛に似ているように感じたんです」

 今年3月にみどりアートパークホール(緑区)で創作劇『ブレストウォーズ 恋する標準治療!〜女の胸はときめくためにある。』(ブレ恋)を上演し大好評を博した。10月には、海を渡りアメリカでも上映された。

一歩一歩、歩みは止めない

 「乳がんと分かった時は絶望でした。ステージも進み手遅れになる一歩手前でしたから。けど、芝居をやろうと決意してからは、笑顔でやってきましたね。手を差し伸べてもらったり、お願いして道を作ってもらったりしながら本当に一歩一歩。次のステップは登った先の足元に見えてくるものだから、これからも一段抜かしせず一歩一歩進んでいきたいですね」

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