安心安全な「食」への関心が年々高まるなか、スーパーでも生産者の名前や顔写真入りの包装で売られる野菜が定番になってきた。いわゆる作り手の「顔が見える」安心感なのだろう。
戸塚区秋葉町在住の吉田雅信さん(47)は農業を始めた約20年も前から、生産者自らが消費者のもとへ直接配達するスタイルにこだわってきた。泉区内に3カ所畑を持つ「吉田てづくり農園」では、農薬や化学肥料を一切使わずに、露地栽培で横浜の気候にあわせた旬の野菜だけを年60品目近く栽培。高級なイメージがある「無農薬野菜」だが一般流通に乗せないため、小松菜が150円程と手頃な価格。前日までの注文で、朝収穫したばかりの新鮮な野菜が当日中に届く。「有機栽培でできた野菜を気軽に味わって欲しいから」と、会員制の個別宅配で配達も無料。配達の際には畑や気候で変わる野菜の状況などを伝えて消費者への理解を深めている。「自分で作ったものだから何でも答えられる。逆にお客さんから美味しい食べ方を教えてもらうことも。生産者と消費者の新しい関係を作れたら」
これまで自宅がある戸塚区を中心に口コミで会員数を伸ばしてきたが、最近は野菜にこだわるレストランからの注文も多く、販路も安定。幼稚園の芋ほり行事や規格外の野菜を福祉施設に安く提供するなど、地域との関わりも増えてきた。
吉田さんは商社の営業マンだった30歳の時に脱サラ。「自分で作ったものを売りたい」と農業の道に。専門学校で1年間学んだ後、農地探しからスタート。当時無農薬・無化学肥料栽培を始めたのは差別化のためだったが、今では「次世代に引き継ぐ有機農業の普及」を目標に掲げている。
消費者の意識に大きな変化を感じたのは東日本大震災以降。特に子育て世代や良いものを少量欲しい年配者を中心に関心を集めた。それでも今なお有機野菜は全流通量の1%にも満たないのが現実だ。「全て有機農産物だけで生活するのは難しいですが、できる範囲でも本来の自然でできた野菜を選択する消費者が増えれば、有機農業の就農者も増えるはず」。消費者の選択がこれからの農業を変えていくのかもしれない。【携帯電話】090・6018・0639。
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