向ヶ丘の住宅街にある古い民家に子どもたちの元気な声が響く。ここは「たつのこ共同保育所」。保護者と保育者が共に運営する保育園だ。川崎市内で唯一の共同保育所には、主体的、積極的に子育てにかかわる大人たちの姿があった。
たつのこ共同保育所(向ヶ丘137の3【電話】044・866・2195)は、高津区の女性たちが中心となって1977年に設立された。川崎市の認定保育園で、現在9人の子どもが通う。
川崎市内に共同保育所は同所のみ。一般的な保育園とは異なり、保育者と保護者が共に運営し、個人の経営者がいない。先生という呼び方もなく、保護者も保育者も「大人」と呼ぶ。預ける側(保護者)と預かる側(保育者)の垣根を越え、共に保育園を支えている。
経営や行事に携わることで保護者の負担もある。しかし、保護者の一人は「仕事をしながら、保育にもかかわることができるので、子どもを預ける時に『申し訳ない』という後ろめたい気持ちにならない」と話す。
2月の餅つきにはOBを含め50人以上が集まった。高校生になった卒園者の姿もあり、世代を超えて交流する姿が。3人の子どもを預けたOBの男性は「いつでも帰ってこられる家族のような場所」と表現する。
親たちに同所を選んだ理由を聞くと「子ども同士のけんかを見守ってくれる」「少人数でしっかり見てくれる」「無添加の給食」などの声が多かった。なかでも一番支持されていたのは「自由さ」。杓子定規のルールはなく、子どもの自主性を尊重している点だ。散歩の行き先なども子どもたちが話し合いで決めるという。
川崎市の福田紀彦市長は「待機児童ゼロ」を公約に掲げる。だが「たつのこ」は定員割れ。今春は3人が巣立ち、次年度に入所が決まっているのは1人のみ。経営状況は厳しい。「認定(無認可)と認可の補助に差がある。認定を活かしてほしい」と保育者。市が新年度の認定保育園利用者への補助金額拡充を示したが影響はない。ある親は訴える。「利便性を求める現代で共同保育や自由保育は受け入れられないのでしょうか。『たつのこ』をたくさんの人に知ってもらいたい」
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