関東甲信越、東北地方で記録的な暴風雨を観測した台風19号は、高津区内でも犠牲者1人が出るなど大きな被害をもたらした。川崎市によると、区内の浸水被害は約560件で、特に多摩川、平瀬川沿いの一部地域で床上浸水をするなど、甚大な被害が出ている。(10月15日起稿)
河川流域に集中
区内では、宇奈根、久地、溝口、二子、諏訪、北見方、下野毛地域で道路、床下、床上浸水被害が生じた。
多摩川と平瀬川の合流地点が越水し、広範囲にわたり浸水した溝口や久地の一部地域では、2階まで床上浸水した住宅もあった。マンション1階の水没により男性1人が亡くなっている。
高津消防団高津分団の団員でこの地点を巡回していた男性は「夕方前には水が溢れてきて土嚢を30、40個積んできた。深夜に向かったら様子が一変し愕然とした」と話す。
台風が過ぎた翌日13日、消防団や消防署、民間企業などの排水ポンプ車4、5台で1日中、排水作業が行われた。
宇奈根地域では、道路冠水に見舞われた。住民によると午後6時過ぎ、マンホールから雨水が逆流し始め、7時頃には側溝など逆流箇所が増えたという。同地域に住む男性(77)は「あっという間に道路に泥水が上がってきた。多摩川も注視していたが(気象庁が匹敵するとした)『狩野川台風』の時より、水位が高かったと感じた」と話す。
北見方町会は、12日午後10時過ぎ、床上浸水、停電も発生した。住民によると川の水位が上昇し雨水処理能力を超えた内水氾濫だったという。町内に住む男性は「1メートル近く水があがり、子どもはライフジャケット着用で避難させた」という。同町会の避難所となる東高津小学校は「人でいっぱいになった」ため、12日午後、自治会館を急遽避難所として開設。70人ほどの住民が自治会館で一夜を明かした。
市によると、台風19号により開設した避難所、避難者数は最大156カ所、2万9100人。区内では17カ所、5190人だった。また、市内浸水被害は約1360件。区内は約560件で中原区(約720件)の次に多かった。
追われる災害ゴミの搬出処理遅れに不安の声も
1メートルほど床上浸水した北見方町会では、台風が明けた13日から水に浸かった家具などの搬出作業が行われている。
14日は川崎市子ども連盟の会員や川崎フロンターレのスタッフなど、遠方からボランティアも参加。同町会の自治会館では、住民や高津第三地区社協による炊き出しも行われた。
自身の住宅も床下浸水の被害を受けた同町会の藤原忠興会長は「電気も通らず、食事も作れない状況。高齢で一人暮らしの人もいるので、家具の搬出作業など、町会やボランティアの方たちの協力に感謝したい」と話す。
一方、災害ゴミの搬出作業の遅れなど今後を不安視する声も多い。住宅前には使用できなくなった家具などの災害ゴミが並び、処理場へ搬出する目途が現時点で立っていないという。藤原会長は「ごみをどかさないと家の消毒もできず、一時避難させている車も戻せない。住民から不満の声が増している」と吐露する。
川崎市は現在、災害ゴミの対応を行っている。特に床上浸水などの被害が大きい地域は、一般ゴミ収集車とは別に収集車が向かい、災害ゴミの回収を行っている。
高津区エリアを管轄する宮前生活環境事業所によると、10月15日時点では、1日6台から7台、3回転稼働し、被害の大きい地域のゴミを収集している。担当者は「範囲が広く、ゴミの量が多すぎて回収が間に合っていない。道幅が狭く、ごみも置かれるため車が入れないところもあり、対応に苦慮している」と話す。
同事業所は、一般収集が休みとなる日曜日の稼働を検討している。「できる限り、早めに撤去できるよう、対応は考えていきたい」と話す。
持ち込み受け入れ開始
市は、生活環境事業所への災害ゴミ持ち込みを受け入れている。濡れた家財道具、建物などに使用されたトタン板、雨どい、木や枝など。受付時間、曜日については同所【電話】044・866・9131。
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