川崎市が市議会に先月提出し、対象を制定後の被害者に限定する方針を示した「犯罪被害者等支援条例案」が、今月の定例会で議論される。根拠の一つとなった登戸児童殺傷事件を含め、制定以前の被害者は既存施策での支援にとどまることに対し、市議会では「柔軟に対応すべき」との声もあがっている。
犯罪被害者の支援に向けた条例は、政令指定都市では横浜市など8都市で制定。川崎市では通学途中の児童らが被害に遭った2019年の登戸事件などを契機に、制定の動きが進んだ。市の施策では、県の条例で補いきれない住居や日常生活など中長期的な支援や被害者に特化した専門的な相談、見舞金制度などを盛り込む。
市は制定以前の被害者を対象外とする方針で、市議の一人は「支援が必要な人を取りこぼさないことが大切。弾力的に運用されるべき」と指摘。市担当者は「登戸事件より前に被害に遭われた方もいる。さかのぼるには公正な線引きが難しい」との考えを示す。
制定以前の被害者について、市は既存の支援策でニーズに合わせて対応するという。一方、県の施策は被害発生から3カ月までの初期対応が中心で対象も限られる。他の市議は「遡及は困難だが、当事者にどう寄り添えるかが課題」とも。今回の条例案は新たな支援策の指針として、年内制定の見通し。22年4月の施行を目指し、具体的な支援内容などについては年明けに議論される。柔軟な対応を求めている市議は「川崎の実情に合った特色ある条例に。きめ細かな支援を求め続けるしかない」と訴える。
子どものケア連携と継続を
条例案には現状、子どもが被害に遭った場合に特化した内容は含まれていない。神戸市は「子どもの学習支援」、三重県は「学校との連携」などを明文化している。各地の団体で組織する全国被害者支援ネットワークの担当者は「小中高校、大学と環境が変わる中で適切な機関につながりにくく、長期的に苦しむ人もいる」とし、関係機関の連携、中長期的な継続支援の必要性を説く。「条例で示されることが支援体制の強化にもつながる」と強調した。
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