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高津区版 公開:2011年9月2日 エリアトップへ

不育症を考える

公開:2011年9月2日

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〜第1章・体験記〜「産むことを諦めたくない」

 不育症は、妊娠はするが流産や死産を2回以上繰り返して生児を得られない状態をいう。妊娠した女性の2〜5%程度が不育症ともいわれ、以前は原因不明とされていたが近年新たなリスク因子が発見され解明されつつある。原因にもよるが治療すれば約80%以上の人が出産できるということがわかってきた。ただ治療費や検査費用が多額で多くの自治体に助成制度がない。そのため出産をあきらめる人も多いという。川崎市も助成制度がない市の一つだ。最近になり女性議員が中心となり、公的資金導入を求める声が高まっている。不育症の現状について探った。

 幸区に住む女性(28)はわずか7週間で終わってしまった最初の妊娠生活を乗り越え2010年の春、2回目の妊娠をした。

 はじめての流産のとき医師から「流産は妊婦の10人に1人いう高い確立で起こり、その殆どが赤ちゃん側の染色体の異常です」との説明を受けた。「今回は運が悪かっただけ」そう自分に言い聞かせ辛い気持ちを抑え乗り越えた。

 2度目の妊娠。妊娠8週目の検診では小さくとも一生懸命動いている心臓に喜びを感じた。しかし通常8週目の赤ちゃんの体長は18ミリほどなのに対し、6・6ミリと少し小さな赤ちゃんに一抹の不安を感じていたが医師の「問題ない」との言葉を信じ帰宅した。

 それから3日後、赤ちゃんはおなかの中で亡くなった。2度目の流産。約1ヵ月後、下腹部の突然の痛みに見舞われトイレの中で出産。透明な袋に包まれた赤ちゃんを素手で取り上げタオルにくるんだ。氷水のように冷たくなった赤ちゃんに「ごめんね、ごめんね」と泣きながら産んであげられなかった事を謝った。その後夫に連れられ病院にいき赤ちゃんを病理に出し、お別れをした。2度目の光景。帰りにマタニティーマークをカバンから外したときの虚しさ、悔しさそして夫や初孫を心待ちにしている両親に申し訳ない気持ちに心が苦しくなった。しばらくは特定の人と以外は会えなくなった。

 その後も妊娠はするものの流産を繰り返す。ある時、先生から不育症の可能性があることを告げられた。

 「ふいくしょう…?」

 どんな検査をしてどんな治療をしているのかさえ知らなかった。しかし検査をすれば今までの流産の原因がわかるかもしれないと検査を依頼。そこで先生から意外な言葉が返ってきた。

 「ここではちゃんとした検査ができないので専門の病院を紹介します」。女性が通っていたのはかなり大きな総合病院で不妊治療もおこなっているが不育症の治療はおこなっていない。不育症の治療を専門的に受けられるのは県内では1つしかないという。

 検査費用は数万円。多額だが原因が知りたいと検査し、第XII因子欠乏症という原因がわかった。アスペリンとヘパリンを使えば約95%の確率で出産できるという。治療費は高額だが命には代えられないと次に妊娠時には治療を受けると決めた。女性は「産むことを諦めたくない」。そう話す。

 女性は現在、市民団体「不育症そだってねっと」に加入し、同じ病気で苦しむ女性のため、不育症の認知と公的資金導入に向け、広く活動している。

〜第2章・不育症の現状〜「8割の確率で出産も」

 宿った命との別れの辛さ。不育症で苦しむ女性は幾度となく直面してきた。情報不足で、病気だということも知らず、何度も流産や死産を経験。「何で自分だけこんな目にあうのだろう」や「自分の責任だ」などと様々な感情を抱え自分を追い詰め、うつ病にかかる女性も少なくない。不育症は、まだまだ認知度が低く、研究は始まったばかりだ。

 厚生労働省の研究班の調べでは、妊娠した女性の約16人に1人という高い割合であることがわかった。

 横浜市に住む女性(33)は27歳の時第一子を出産した。2年後、そろそろ子どもがほしいと思い、まもなく妊娠。第一子同様、順調に育つかと思いきや妊娠初期で流産してしまった。その後も同じように流産を繰り返してしまった。そして検査を進められ、不育症と診断されたのだ。このように出産を経験しながらも、突然発症するケースもある。血液の凝固異常や、夫婦の染色体異常、甲状腺の異常、子宮の形態異常など原因は様々で未解明な部分が多い病気でもある。様々な要因があるものの、研究が進んだ結果、原因にもよるが治療をすれば80%以上の確率で出産できるという。

 そもそもなぜ今まで研究がなされてこなかったのか。

 「大きな原因として流産は治療の対象になってこなかったことがある」と厚生労働省不育症研究班の関係者は話す。一昔前は、流産は胎児側の染色体異常というかたちで片付けられてしまってきたため、流産のことを研究する医師が少なかったが、近年研究が進み、色々なことがわかってきた。様々なリスク因子も発見され、産婦人科医の間でも不育症が認知され始めた。ただ、研究してきた医師が少ないため専門院は全国でわずか十数カ所。相談所などを設けている自治体や関係機関も殆どない。不育症の認知が広まり始める一方、患者の受け皿が少ないという問題点もある。

 このような現状を受け不育症の研究班では、現在医療関係者向けにセミナーの開催や手引きの作成など、様々な活動を行なっている。以前はバラバラだった治療方法も統一に向け大きく動き出し、不育症患者の環境も整い始めている。

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 次回は自治体の動きと費用について探る。
 

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