▼昨春の熊本地震以降、現地支援に取り組んできた川崎市は地震防災戦略の中で、市民への啓発強化を掲げている。NHKスペシャル取材班の著書『震度7/何が生死を分けたのか』によると、阪神・淡路大震災当日の犠牲者5036人のうち、約4千人は地震発生後1時間以内に命を落としており、窒息死が大半だったという。川崎市の昨年の市民アンケートでは、家庭内の大規模災害の備えとして、家具等の転倒対策より停電対策や飲料水の備蓄が上位に入った。地震直後の命の危険への対策を、日常生活から見直す必要がある。
▼生活に密着した身近な団体に、自主防災組織でもある町内会・自治会がある。多摩区町会連合会の末吉一夫会長は「家族の次に隣近所、地域との関係づくりが重要。現場の住民同士で防災対策を研究していく必要がある」と話す。一方、市内の町内会・自治会加入率は、昨年4月1日時点で63・2%。市民アンケートによると60歳以上では8割超の加入率に対し、18〜29歳は2割程度にとどまる。加入しない理由は「日常生活に支障がない」が36・8%で最多。町内会活動への参加率は16・9%と低く、不参加の理由に「人間関係がわずらわしい」が29・4%と課題が浮き彫りになった。
▼高層マンションが立ち並ぶ武蔵小杉エリアでは、独自の災害対策を進めている。複数の町内会やマンション管理組合など13の自主防災組織による上丸子小学校避難所運営会議は、昨年11月に避難所開設訓練を実施。また、NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメントの防災組織では、高層マンション住民に必要な情報を簡潔にまとめた防災冊子を作製し、全戸配布する予定だ。同事務局は「絵や数字でわかりやすく読んでもらえるよう工夫した。行政に頼らず自ら行動する意識に繋がれば」と期待を込める。
▼市民主体で防災活動を担う消防団は、警察や病院、近隣区とも連携を強める。中原消防団の小島光儀団長は「実際起きてみないと、どうなるかわからない。まずは自分を守る意識を持ってもらいたい」と訴える。災害直後に自らの命を守り、地域で助け合える環境づくりが急務だ。近隣住民同士で日頃から声がけを交わし、情報共有するとともに、地域ぐるみで災害から身を守れる体制を整えたい。
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