昨年12月に行われた「川崎フロンターレ中村憲剛選手の引退セレモニー」。多くの感動を呼んだプログラムの中では川崎市市民栄誉賞の贈呈式も行われ、福田紀彦市長から特製シャーレなどが中村選手に手渡された。
この特製シャーレは、川崎区大島のデザイン彫金士でかわさきマイスターの久保田宗孝さん(63)が手掛けたもの。久保田さんによると、直径約30cmのサイズで皿の中にイルカ、ツツジ、フロンターレのロゴの装飾が施されている。装飾は純銀の打ち出しだ。イルカ部分にはプラチナ製のサッカーボールも添えられ、中村選手の背番号にちなみ、14個のダイヤモンドを散りばめた。サッカーボールは外すとバッジとして使うことができる。
「記念品を作ってほしい」と市から久保田さんの元に依頼が寄せられたのは11月中旬。当初、誰に贈るとも明かされず困っていたが、福田紀彦市長の意向がシャーレであることが分かり「中村選手に贈るのだな」と察知した。長女涼香さん(20)が小学生の頃、当時通っていた小学校に中村選手が訪問した記憶も思い出した。「サッカー選手として一流のプレーヤーであることはもちろん、子どものための活動にも熱心で人間的にも素晴らしい」というのが久保田さんの中村選手に対する印象だ。ただ、その頃、久保田さんが営む「ジュエリークボタ」は繁忙期でもあった。「ぜひ手掛けてもらいたい」という長男京太さん(27)の後押しもあり、仕事を引き受けた。
シャーレの歴史を調べると、ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガの優勝者に授与するためにマイスターが手掛けていたことが分かり、縁を感じた。「同じようなものを作りたい。手作りの味を出したい」と職人魂に火が付いた。装飾部分は重厚感を出すため、何層にも分けてロウ付けを施した。徹夜もし約2週間かけて作りあげた。
完成したシャーレを手に久保田さんは「いい仕事ができた。機会を与えてくれた市や中村選手に感謝したい」と満足そうな表情を見せていた。
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