川崎市文化財に指定される新城の囃子曲持。伝統を伝える新城郷土芸能囃子曲持保存会(千葉康史会長・70)が、新型コロナの影響で発表の場を失っている。同会など市内30団体が毎年3月に行う「川崎市民俗芸能発表会」と、新城小学校への出張体験会は2年連続で中止。各地催しへの出演依頼もなく、昨年新春の獅子舞巡行を行って以来約1年半もの間、観客の前で披露できていない。会員らは今秋予定される新城神社祭礼での舞台を心待ちにするが、まん延防止等重点措置の延長で開催に黄信号が灯る。
懸念されるのは、次世代への継承だ。同会は明治時代から続く囃子と曲持を一体化させ1973年に発足。笛と太鼓で奏でる囃子に合わせ、約25キロの俵を農具などで持ち上げる数々の技芸で観客を魅了し地域に根付かせてきた。しかし発足から50年、会員約30人のうち30代以下はわずか4人と担い手不足が課題となっている。
こうした状況を受け、同会はホームページの更新や若者向けのポスター作成に乗り出している。秋頃の完成を目指し、地元店などに協力を呼びかけたい考え。秋の祭礼が中止になった場合も、地域に発信する「公開練習の場」を設けてほしいと同神社氏子総代に提案しているという。千葉会長は「地域コミュニティーの一翼を担ってきた郷土芸能の伝統を伝えていく責務がある」と強調する。
披露できない状況は、会員の士気や技術面にも影響を与えかねない。同会は市の感染対策に則り練習しているが、自粛する会員もいる。また、「一人前になるまで10年かかる」と言われる笛や太鼓の技術を維持するのも容易ではない。前会長の矢嶋一義さん(76)は「発表できなくても中途半端な芸は見せられないので練習を積むしかない。気持ちの維持は難しい」と複雑な胸中を語る。7月10日の練習に参加した井上荘一さん(58)は「曲持を今も伝えているのは全国で2カ所だけ。伝統を絶やしたくない」と前を向く。
市民俗芸能保存協会に加盟する30団体のほとんどが活動できていない状況という。同協会の廣田健一会長は「披露できずもどかしい。受け継がれてきた伝統を守ることが、地域への愛着にもつながる」と力を込める。
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