いざ、戦いの夏へ
仲間の思いを背に
インターハイ進出をかけた県予選の準決勝。規定の試合時間4分を過ぎても勝負がつかず延長に入った。相手はライバル・桐蔭学園高校の選手。「気持ちだけは絶対に負けない」と集中力を研ぎ澄ませた。互いに譲らず延長戦は10分に及ぶ激闘に。一進一退の攻防の中、相手が勝負を仕掛けにくる刹那を見逃さなかった。出鼻に合わせて放った一閃が、小手を捉える。「一本」。死闘が決着し、インターハイ進出が決まった瞬間だった。
167cmと決して体格に恵まれているわけではない。強豪の中には大柄な選手も多く「勝つためにはとにかく足を使うこと。稽古で気を抜くと試合で出てしまうので、常に実戦をイメージして、自分を追い込んで練習している」という。昨年のインターハイ個人戦に出場した1学年先輩の西山晃平選手の姿を見て「自分もあの舞台に立ちたい」と、己に足りないものを追い求めてきた。最も自信を持っていると語る「面」は地道な積み重ねが築いた足腰があってこそ放てるものだ。顧問の松原剛教諭は「小柄だが運動能力が高く攻撃的な剣道ができる。こちらが指示する前に自分で工夫して鍛錬を積むことができる、意識が高くクレバーな選手」と評する。
「自分の力を出し切って悔いのない剣道を見せたい」。大会への抱負に一段と力がこもるのには理由がある。打倒桐蔭を掲げて臨んだ団体戦は県予選決勝でそのライバルに惜敗。あと一歩で夢はついえた。共に汗を流した仲間の思いを背負い剣士は竹刀を振るう。舞台は佐賀県。8月7日、戦いの火ぶたが切って落とされる。
照準は「上」へ定め
直前までの穏やかな表情が一転、鋭い眼差しで標的を睨む。狙うのは10m先、直径45・5㎜のターゲットだ。実際に射撃位置に立ってみると小さな点にしか見えない。さらに、真ん中の「10点」は僅か0・5㎜の点だ。1発撃つだけでも極限の集中力を要するが、試合では60射の合計600点満点で争われる。「一番大切なのは自分のリズムで撃ち続けること。ミスが出ても動じないメンタルも欠かせない」。
エア・ライフルを始めるためには公安委員会による銃の取り扱いや法律に関する講習会を受講し、警察署に申請した上で許可を受ける必要がある。銃の管理などの理由から深沢高校には練習施設がなく、同校にあるビーム・ライフルで感覚を養うほか、施設がある私立高木学園(横浜市港北区)へ足を運んでいる。練習環境に苦労がある中で昨年10月に「ビーム」から転向した理由は「大学では射撃と言えば『エア』が主流。五輪競技にもある。進学してからも射撃を続けたい」という思いからだ。
「ビーム」と「エア」では、ルールはほぼ同じだが銃の重さや実際に弾が出ることから射感にも違いがあるという。ライフル競技の魅力を「努力した分だけ上にいける。自分の背中を後輩たちにも見てほしい」と力強い。
5月の県予選では566点を記録。「全国で戦うにはまだまだ。練習でのベストスコア576点を平均的に出せればいい勝負になる。目標は優勝」と抱負を語る。7月28日から広島県で開幕する全国高校ライフル射撃競技選手権。勝利への照準は定まった。引き金に指はかかっている。
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