金色の髪に優しい眼差し、182cmのスラリとした体躯――絵本から抜け出してきた「王子様」のようなフィンランド人留学生が、鎌倉学園で柔道に打ち込んでいる。人口とGDPの規模が北海道と同程度ながら、携帯電話生産量世界一の工業先進国として知られる北欧の国からやってきたのは、アーサー・シモン君(17)。アニメをきっかけに日本に興味をもち来日したアーサー君は、日本語の勉強のかたわら、昇段試験での黒帯獲得を目指し、練習に励んでいる。
アーサー君が日本に興味を持ったのは13歳の頃。インターネットで見た日本のアニメがきっかけで、特に『進撃の巨人』がお気に入りだという。
今年3月に来日。4月から通っている鎌倉学園では、はじめのうちは日本語の授業についていけない部分があったものの「色々な人のサポートで段々内容が分かるようになってきた。今はとても楽しい」と話す。
真摯な練習態度
故郷ではスキーやゴルフなどに親しむスポーツマンのアーサー君だが「格闘技は全く考えていなかった」という。しかし顧問の渡辺和弥教諭の熱心な勧誘もあり柔道部に入部。現在は授業が終わると道場に直行し、先輩の指導のもと、コツコツと技の反復練習を続ける。穏やかに話す普段の様子からは想像もつかない大きな掛け声も発する。
「みんなの動きが速くてついていくのが大変」と苦笑いするも、182cmの体格を活かした「大外刈り」を得意技とし、練習では上級生にもひるまずに果敢に挑む姿が印象的だ。
渡辺教諭は「何事にも一生懸命で、謙虚で真剣。誠実な姿勢が実力につながっている」とアーサー君を評価。10月に昇段試験を受けて1級となり、帰国前に黒帯の試験を受ける予定だ。「一度きりのチャンスなので、何とか合格したい」と意気込みを語る。
富士登山にも成功
練習に勉強に忙しい日々を過ごす中、たまの休日には部活仲間と出かけることも。「カラオケとかに行って一緒に盛り上がるのが楽しい。きゃりーぱみゅぱみゅを歌ったりします」とはにかむ。また、ホームステイ先の円応寺では作務衣を着て来客をもてなすこともあり、同寺の今井澄枝さんは「檀家さんにも好青年と評判です」と笑う。
来日する前から「やりたいことリスト」を作成しており、7月にはその中の一つであった富士登山を、今井さんらの協力で叶えた。
学園の仲間とともに頂上で見た日の出は忘れられない思い出となったという。ちょうどその日はアーサー君の誕生日。「最高の一日になった」と満面の笑みを浮かべる。
夢はパイロット
将来の夢を「パイロット」と語るアーサー君。帰国後は軍のパイロットを目指すという。「柔道の精神やお寺の生活を通じて自分の世界が広がった。この経験を活かして頑張りたい」。1月の帰国を前に、将来について輝く瞳で語った。
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