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第38回土門拳賞 受賞 「カンボジアの実情伝えたい」 浄明寺の写真家・高橋智史さん

社会

掲載号:2019年4月26日号

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浄明寺在住。37歳。昨年、危険と隣り合わせの活動への“最大の理解者”である妻と結婚。雪ノ下カトリック教会で式を挙げたばかり。
浄明寺在住。37歳。昨年、危険と隣り合わせの活動への“最大の理解者”である妻と結婚。雪ノ下カトリック教会で式を挙げたばかり。

 市内浄明寺在住の写真家・高橋智史さんの写真集『RESISTANCE カンボジア 屈せざる人々の願い』(秋田魁(さきがけ)新報社)がこのほど、第38回土門拳賞(毎日新聞社主催)を受賞した。同賞はプロ・アマ問わず、写真家や評論家らの推薦により選出され「写真界の直木賞」とも呼ばれる。受賞作はフン・セン政権による強権支配が続くカンボジアで、命をかけて立ち上がる人々の姿を収めたもの。「受賞が多くの人に実情を知ってもらうきっかけになれば」と語る。

写真は伝える武器

 高橋さんは秋田市出身。「戦争などで苦しむ弱い立場の人を支えたい」と地元の高校を卒業後に上京し、国際協力を学ぶ専門学校へ進学した。

 そこで気付かされたのが、伝えることの重要性だったという。「どんなに悲惨な状況も知らなければ、関心を持ったり思いを寄せることはできない。ならば自分は伝える人になろうと決意した」

 そこで手にしたのがカメラ。「写真には強い力がある」と全くの初心者ながら、日本大学芸術学部写真学科に進み、在学中の2003年から、アジア各国での取材をスタートさせた。

 そして、ごみ山で生きる子どもたちの姿を写した写真と記事が共同通信から配信されたのを皮切りに、07年、カンボジアの首都プノンペンに拠点を移し、故郷の新聞社・秋田魁新報で「素顔のカンボジア」と題した4年間の連載を続けた。

民主主義の破壊

 「15年間の取材で最も民主主義の破壊を感じたのは、昨年夏の総選挙までの3年間」と振り返る高橋さん。

 ポル・ポト派による独裁と大量虐殺という暗黒の歴史を持つ同国だが、30年以上にわたって続くフン・セン政権による強権支配が再び黒い影を落としている。

 2018年の総選挙前には最大野党・救国党が解党させられ、300万人といわれる支持者が意思の受け皿をなくした。政権に異を唱える活動家のテップ・バニーさん(写真集表紙の女性)はデモの最中、目の前で連れ去られ、ラジオや新聞などのメディアも次々と閉鎖に追いやられた。

「サトシが伝えて」

 そうした抵抗運動の最前線にいた高橋さんにも危機は訪れた。ある時、デモを制圧する武装警察に「今撮った写真を消せ」と詰め寄られた。

 「見せしめのように投獄された外国人ジャーナリストがいることも知っていた。消さなければ捕まる危険性があったが、この真実を伝えるためにも消すわけにはいかなかった」と高橋さん。

 すると、仲間たちが「人間の盾」となって武装警察から引き離してくれた。「早く逃げて、サトシが伝えて、と助けてくれた。とにかく必死に逃げた」

 こうして「意味のない総選挙」を見届けて帰国すると、すぐに写真集制作を進め、昨年12月10日の「世界人権デー」に合わせて出版した。「今でも悔しさで涙が込み上げる。今回の受賞がこの15年間の実情を伝えるきっかけになれば」と話す。

 高橋さんは5月に大阪での写真展などを行った後、再びカンボジアへ向かう予定だ。受賞作は税別2500円。全国の書店や秋田魁新報社などから購入、取り寄せ可能。

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