西鎌倉在住の長谷川正子さん(76)がこのほど、絵本『みどりのバケツのおいしゃさん』を(株)文芸社から出版した。モチーフとなったのは2人の孫と幼い頃に遊んだ時のエピソード。現在は医師を目指して奮闘する孫たちへのエールを込めた。
物語の舞台は、海に浮かぶ小さな島に建つ病院。主人公の「みどりのバケツのいんちょうせんせい」が、島の住民の「たぬき」や「さる」といった動物のぬいぐるみを治療し、元気にしていくというストーリーだ。
3歳児の発言きっかけに
川崎市に生まれ、23歳で結婚した長谷川さん。40年ほど前から西鎌倉に住む。俳句や川柳、物語を書くのが趣味で、娘の育子さん(51)は「主婦業の傍ら、良い言葉が浮かぶと付箋や折り紙に書く姿をよく目にしていた。母にとって何かを書くことは生活の一部だと思う」と振り返る。
絵本製作のきっかけとなったのは今から20年ほど前、伸太郎さん( 25)、光太郎さん(22)という2人の孫と交わした会話だ。当時3歳だった光太郎さんに長谷川さんが「こうちゃん、大きくなったら何になるの」と質問すると「みどりのばけちゅ。ふた、ちゅいてるの」と答えたという。「おもしろくってかわいくって、ずっと印象に残っていた」という長谷川さんはその言葉から連想し、3年前に絵本を作ることを決意した。
「光太郎がなりたかった『みどりのバケツ』は病院の院長先生に。お餅を食べ過ぎた『たぬき』や木に登って膝が破けた『さる』のモデルは伸太郎。昔はやんちゃで、食べすぎるとよくお腹をさすってあげたり、膝を擦りむいたりしていたから」と思い出して笑う。
医師の道進む2人の孫
現在は共に医師を目指し、医学部に通う伸太郎さんと光太郎さん。きっかけとなったのが、18年前にがんで他界した長谷川さんの夫・正之さん(享年66歳)の存在だ。
「大のおじいちゃん子だった」という伸太郎さんと光太郎さんは、自宅で亡くなった正之さんの姿を見ると、すがりついて泣いたという。当時は珍しかった在宅での看取りを経験したことがきっかけとなり、2人はともに「命に寄り添う仕事に就きたい」と医師の道を志すようになった。
全3シリーズを目指す
絵はイラストレーターの天野めぐみさんに依頼。表紙には、著者として「さく/しんたろう・こうたろう」と記載されている。「だって孫の会話が元になっているから」と長谷川さん。主人公を病院の院長にしたのは、医師になることを決断し、夢を叶えるために奮闘する2人を応援するためでもあるという。
絵本は全3シリーズを予定しており、現在2シリーズ目を執筆しているという。長谷川さんは「絵本には夢がある。たくさんの子どもたちがこの絵本を手に取り、想像力を膨らませ、温かくて優しい気持ちを感じてもらえれば」と語った。
絵本の価格は1200円(税別)。市内のほか全国の書店で発売中。
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