市内大町在住の森田創さん(46)が7月21日、『MaaS戦記―伊豆に未来の街を創る―』を講談社から出版した。ITを活用した「未来の交通」に知識ゼロの状態から携わることになった森田さんが、伊豆半島を舞台にした日本最大級のプロジェクトに挑んだノンフィクションだ。
課題解決の「切り札」
タイトルにも入る「MaaS」(マース)はモビリティ・アズ・ア・サービスの略語で、移動をサービスとしてとらえる新しい概念。例えば、スマートフォンで行き先や時間などを入力すれば電車、バス、タクシーなどから最適な手段・ルートが選択され、手配されるといった事例が想定されている。
少子高齢化が進むなか、地域の課題解決の切り札として期待され、国内でも20以上のプロジェクトが進んでいるという。
著者の森田さんは大手鉄道会社・東急(株)の現役社員。広報課長として活躍していた2年前、社長から突然「MaaSをやれ」と告げられる。
それまで交通事業の経験がなかった森田さんは、予期せぬ異動に意気消沈。同僚たちも明らかに寄せ集めで、当初はいっこうに士気が上がらなかったという。しかしセミナーへの参加や海外視察などを重ねるうちにその可能性に気づくと、メンバーの目の色が変わりだす。
伊豆で実証実験開始
プロジェクトの舞台に選んだのは、同社の関連会社や施設も多い伊豆半島。こうして始まった「日本初の観光型MaaS」だが、昨年4月から行われた実証実験「フェーズ1」では、開始後もスマートフォンアプリの不具合が直らないなどトラブルが続出。事業エリアが重なる地元バス会社とはタフな交渉を強いられ、捲土重来を期して挑んだ実証実験「フェーズ2」のさなか、コロナ禍が伊豆を襲う。
「MaaSは理論は研究されていても国内での実践例は少ないので、今後取り組む人の参考になれば」と森田さん。「鎌倉も高齢者の移動手段と観光客の足の確保の両立という課題があり、MaaSにはそれを解決できる可能性がある。もし地元で導入される際には喜んで協力したい」と話している。
価格は1700円(税別)。島森書店、くまざわ書店、BOOK EXPRESSなどで取り扱い中。
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