「バルト3国のひとつ、エストニアからの留学生が、県内屈指の強豪としても知られる鎌倉学園高校剣道部で汗を流している。彼の名はコプラ・ヘンリくん(17歳)、同校の1年生だ。1991年、当時のソビエト連邦から独立した人口およそ130万人のエストニアは、昨年現役を引退した元大関把瑠都や、世界中で利用されているインターネット通話サービス「スカイプ」を生んだ国でもある。祖国からはるか8千キロ離れた日本に来た理由や鎌倉での生活、そして将来の夢について「日本語で」聞いた。
「誰も行かない場所」へ
歴史的な街並みを残した旧市街が世界遺産登録されている首都タリンからやってきたコプラ・ヘンリくん。鎌倉学園高校で今年3月から来年1月までの10ヶ月間、留学生活を送る。
日本を選んだ理由を「周りに行った人がいなかったから」と話す。友人の多くはアメリカやドイツに留学。しかし、日頃から欧米文化に触れているコプラくんには「箸でお米を食べる」という漠然としたイメージしかない日本が魅力的に映ったようだ。そのことを家族に伝えると最初は猛反対。それでも諦めずにアルバイトをして留学費用の半分ほどが貯まると、家族も認めてくれたという。
日本での生活
鎌倉の印象を「寺社仏閣が多く、歴史を感じる」と話し、今まであまり知らなかった仏教や神道について興味を持ち始めたそうだ。現在は北鎌倉で3人家族の家にホームステイ中。7歳の「弟」もでき、「みんな優しく、日本語も教えてくれる」と笑顔で話す。
実はコプラくん、すでに母国語のエストニア語、英語、ロシア語が堪能。授業ではまだついていけない部分もあるが、ホストファミリーのサポートもあって最初は挨拶程度しか話せなかった日本語はメキメキと上達し、今では日常会話に困ることはない。普段は友達と無料通話アプリ「LINE」でメッセージのやりとりをし、休日には同部の友達とカラオケや買い物へ行くのが楽しみだという。
剣道との出会い
フェンシングをやっていたことが剣道部に入るきっかけに。その腕は相当なもので、17歳以下のヨーロッパ代表選手に選出されたこともあるという。「剣で闘う姿に憧れて8歳からフェンシングを始めた。日本の文化を知るには剣道が一番合っていた」と話す。
最初は戸惑いもあったといい「”礼儀”がこれほど厳しいものとは思わなかった」と振り返る。しかし今では楽しめる余裕も出てきたそうで、剣道部顧問の松原剛教諭も「積極的に吸収しようという意識が高く、その頑張りには目を見張るものがある」と評価する。
今後の夢
「日本語も剣道も、もっとうまくなりたい」と意気込むコプラくん。当面の目標は「初段を取ること」で、将来は語学力を生かした人と接する仕事をしたいと話す。「周りと違うことをするのは面白い」「頑張れば道は開ける」。その表情は、はにかみながらも確信に満ちていた。
鎌倉版のローカルニュース最新6件
|
|
|
|
|
|