新型コロナウイルスの感染拡大で、芸術・文化は危機に瀕している。鎌倉・湘南エリアのクラシック音楽家を支援する湘南クラシックアーティストパラダイス代表の澤田エリザさんに、「コロナ時代」において音楽や芸術が持つ意味、また今後の展開について聞いた。
「不要不急」に困惑
――まず湘南クラシックアーティストパラダイスという団体について教えて下さい。
「鎌倉・湘南エリアには実力があるのに、演奏する機会の少ない音楽家がたくさんいます。一方、音楽ファンにとっても仕事帰りにふらっと足を運べるような、気軽に楽しめるコンサートがない。この両者のニーズをつなげることで音楽家の支援とファンの拡大を図りたいと2015年に発足しました。現在は15人が所属していて、これまで年4〜6回のコンサートを開催してきました。やはり音楽家にとって舞台に立つ、人前で演奏するということは何にもかえがたい経験で、技術も上がりますしより上手くなりたい、と意識も高まります。5年間活動してきて、そうした手ごたえを感じていたところでした」
――新型コロナウイルス感染拡大の影響は。
「3月に予定していたコンサートを中止にして以降、約半年間ほとんど活動できませんでした。8月にコンサートを再開しましたが、入場者を定員の半分程度に抑えたうえでの開催となっています。来場される方もまだ『恐る恐る』という感じですね」
――コロナ禍で感じたことは。
「特に緊急事態宣言のさなかは、音楽をはじめとする文化・芸術が『不要不急のもの』とされて、悲しい思いをしました。でも普段の生活で、カフェに行っていい音楽を聴くだけでもほっとしますよね。もしこの世から音楽がなくなってしまったら、どうなってしまうでしょうか。音楽は目には見えないものですが人を和ませ、癒すもの。嗜好品かもしれないけれど、心にとっては必需品なんです。特にクラシック音楽は長い時間多くの人から必要とされ続けてきたものです。それを次代へとつないでいくためには、誰かが演奏会をやらないといけない、と思っています」
若い世代に音楽を
――今後、企画しているコンサートでは中学生以下の入場料を無料にしたそうですね。
「最近、日本は若年世代の自殺率が高く先進国のなかでは最悪の水準だというニュースを聞いて大変なショックを受けました。確かにいまは若者が人生に希望を見出しにくい時代だと思いますが、その暗闇を照らし、明日への希望や生きる力を生み出してくれるのは、やはり芸術だと思っています。来年1月16日に逗子文化プラザで『超絶技巧曲』ばかりのコンサートを開く予定なのですが、毎回私自身が『こんなに難しい曲が弾けるようになれるなんてすごい』と、素直に感動するんです。ぜひ多くの若者に会場に来てもらって、人間の可能性の大きさ、広さを感じて欲しいと思います」
――今後の展開を教えて下さい。
「『クラシック音楽と音楽家の支援をする』という目的をより明確にするために、団体をNPO法人化したいと思っていて現在、申請の準備をしています。またレベル等は問わずにクラシックピアノを弾いたり聞いたりすることが好きな人が交流できる『ファンクラブ』を立ち上げたいと思ってこちらも準備を進めています。コロナ禍によってオンラインによるコンサートなども普及していますが、やはり生の演奏にかなうものはありません。行くと気持ちが高揚して、また明日頑張ろうという気持ちになれる、そうした機会をこれからも設けていきたいと思います」
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