助産師として神奈川県看護賞を受賞した 柳澤 初美さん 若草台在住 63歳
母たちの願いと共に歩む
○…「母親が自分の力で産めたという達成感が、育児の原動力になる」。自然分娩を行うバースあおばで約3千件のお産に携わり、多くの看護・助産師の育成に貢献したとして、今回の受賞に至った。5月の式典で、学生時代に歌ったナイチンゲールの曲が流れると、これまで歩んだ道のりが脳裏によみがえり、目頭が熱くなった。
○…看護学校を卒業後、勤務先の病院で乳児を担当。産前の環境に興味を持ち、助産師の道に進んだ。自然分娩を行う神奈川県立母子保健センターに勤めていたが、30代の時、施設が閉鎖されることに。「自然分娩の場をなくしたくない」。施設で出産した親や出産を控える親、助産師らが中心となって存続を求め、「カンガルーの会」を発足。運動は千人以上に広がった。「自然分娩から産後ケアまで網羅した施設は、母親たちの(切実な)ニーズ。その声に励まされてきた」。閉鎖後も、自然分娩を支える場をつくるため、会で話し合いを継続し、1996年の助産院開設につながった。
◯…「痛くて辛いお産を、少しでも楽にしたい」。苦しむ妊婦を日々目の前にしてたどり着いたのが、分娩台を使わず、妊婦がより楽な姿勢で行う出産法だった。緊急時も対応できるよう、365日気が休まらない。看護学生や助産師学生が全国から日々実習に訪れ、出産にあたる思いを学んでいく。伝えたいのは、技術よりも妊婦を「見守る」姿勢だ。「危険な時はすぐ対応できるよう判断を見極めなければならないが、実際に産むのは母親。互いを信頼し合い、その場を温かく見守る」
◯…後継者の育成に注力しつつ、趣味も行動を共にするのはスタッフや母親たち。カンガルーの会会員と御岳山にハイキングに行くなど、妊婦の健康向上のためアウトドアも楽しむ。「お母さん同士が交流を広げたり、自信をつけていくのを見るのが嬉しくて」。院内で元気な声を響かせながら、今日も母子を見守る。
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