9月に演奏会を行う青葉区三曲協会の会長を務める 鈴木 良一さん みたけ台在住 74歳
苦楽ともに尺八と
○…9月19日の演奏会を前に「会員たちは日ごろ色々な曲を練習してきた。ぜひ大勢の方に聞いてもらいたい」とPRする。今年1月に会長に就任。小中学校の訪問演奏に、特に力を入れるつもりだ。若年層への活動を意識するのは「近年、邦楽への関心が薄れつつある」という危機感から。「昔はテレビでもよく邦楽が流れたが、今は素晴らしい演奏家がいてもなかなか光が当たらない。少しでも関心を広げたい」
○…20代のころ、勤め先の先輩から同好会に誘われ、尺八の世界に。思い出深いのは40代のころ、国際的に活躍した今は亡き横山勝也氏に師事した時期だ。稽古場に通うのは、自分以外はプロばかり。それでも分け隔てなく親身に指導し、時には自らおでんをつくり、振舞う師匠の姿に「人間的にも多くを学んだ」と懐かしむ。「尺八は吹き方によって色んな音色が出せる奥深い楽器。先生に言われた言葉の真意が、ようやく今になって分かることもある」と語る。
○…サラリーマン時代は、製鉄会社で技術研究を重ねてきたが、時代の流れで鉄鋼の景気が悪化。異なる分野で商品開発の新規事業を担当し、出向も経験した。カップラーメンの研究まで幅広く担当したが「これまでの研究との違い。商品化までの難しさ。なかなかうまくいかなかった」という。辛いとき、支えになったのも尺八だった。昼休みは毎日屋上で尺八を吹き、出向先でも小部屋で練習を続けた。悩んだときも気持ちが安らいだ。
○…「今は毎日が日曜日。やりたい放題で一番楽しい」と、退職後の時間を満喫。夏には毎年、愛車の大型バイクで北海道を走り、行き着いた先で一人テント生活をする。誰もいない広大な自然のなか「自分独りの世界に入り込める」と、奏でる尺八が最高の楽しみだ。孫娘たちと遊ぶことも多い、穏やかな日常の幸せにスパイスを加えつつ、邦楽の普及に情熱を燃やす。
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