能登半島地震では広範囲で断水が続き、水洗トイレが使えない避難所が多く出る深刻な事態となった。災害時のトイレ使用が関心事となる中、横浜市は避難所である地域防災拠点に携帯タイプなど、数種類のトイレを備蓄しているが、その数は想定避難者数との比較で多くなく、不安視する声も聞かれる。
市の防災計画によると、最大震度7の「元禄型関東地震」が起きた場合、2012年時点の想定で、家の倒壊などで自宅に住めない人が生活する地域防災拠点(459カ所)に57万7千人が避難するとしている。
この想定に基づき、拠点には洋式便器に取り付けて使うトイレパック5千個のほか、下水道管に直結して使うマンホールトイレが5基、くみ取り式仮設トイレ2基、簡易式トイレ便座6基を備蓄。災害トイレを管轄する市資源循環局によると、「不足に備え、倉庫などに予備を備蓄している」という。さらに、仮設トイレのレンタル業者やトイレパックメーカーと協定を結んでおり、備蓄品だけではない対応も考えている。
国指針 目標は3日分
市が示す拠点マニュアルにはトイレの使用順位が示されている。建物内のトイレが使えない場合、仮設トイレが設置されるまではトイレパックを使用するとしている。
内閣府が定める避難所のトイレに関するガイドラインでは、1人が1日5回使用すると仮定し、トイレパックのような携帯型トイレは3日分の備蓄を目標にしている。
12年時の想定に基づく単純計算では、1拠点に1200人以上が避難することになる。この場合、一律配備の5千個のトイレパックだけでは1日分にも満たず、追加分やマンホールトイレ、仮設トイレ頼みとなる。
ある区役所の防災担当者は「首都圏が被害を受ける地震だと、東日本大震災や能登半島地震で見られたような全国の自治体からの給水車やトイレの協力はすぐに期待できない」と話し、「地域防災拠点の訓練でもトイレに関する内容は少ない」と、実際の拠点運営では相当な混乱が生じるのではとの見方を示した。
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