日蓮宗樹源寺 権住職 日比(ヒビ)宣仁(センジン) 連載37 法話箋 〜鹿苑〜 学解仏教と仏伝文学
釈迦没後、その舎利(しゃり)(お骨)は八等分され、インド各地に祀られました。釈迦生前、その弟子や信者(つまり仏教徒)の礼拝対象は「お釈迦さま」でした。しかし、釈迦亡き後、仏教徒のお参りの対象は釈迦の舎利が納められている仏塔(ぶっとう)となりました。仏塔は各地に建立され、周辺には仏教の出家者(しゅっけしゃ)が居住する僧院(そういん)が設けられました。出家者達は釈迦の教えを哲学的に考察し、分析し、それに基づいて瞑想修行をしていました。しかし、その難解な内容は在家者(ざいけしゃ)(出家をしていない人々)には到底理解できるものではありませんでした。在家者達は哲学的な考察よりも偉人釈迦を讃えることを重視し、釈迦の壮大な修行時代を描いた前世物語(本生譚(ほんじょうたん))や、釈迦の生涯を伝説的に物語る一代記を作成しました。ここに、哲学的な学解の仏教と、釈迦を崇(あが)め奉(たてまつ)る仏伝文学の仏教という二大潮流ができたと考えられます。観音菩薩や文殊菩薩といった諸大菩薩は、仏伝文学の登場人物なのです。
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