高津物語 連載第八七六回 新春雑感
老人が生活して行く中で大事な三要素は「転ぶな・風邪引くな・義理を欠け」だそうで、毎年の慣例を中止するのには些(いささ)かの勇気がいったが、私も後期高齢者となり、また骨折術後の体調もあって、お会いする事もなく新年の挨拶だけの付き合いだった方への年賀状を欠礼させて頂いた。
歳を重ねると、今まで普通に出来ていた事も困難になってくる。そんな矢先、私がまだ通院中なのに、主人が悪性リンパ腫で入院という事態になり、増増普通の生活が出来なくなった。
毎日の病院通いは、退院したばかりの私の体を蝕み忽(たちま)ち体重が7キロ減った。
しかし家に居ても家事は手に付かず、主人の事ばかり思った。
幸い手術は免れたが、繰り返し行う点滴治療の為、両腕が青痣だらけになり、髪も梳かす度に、ごそっと抜け、仕方なく私がバリカンで丸刈りにした。
入院する前、様子が変だった主人に「早く病院で診ていただいたら」と言っても聞かず、教室の皆さんに「すぐ行った方がいい」と言われ、病院に行ったぐらいだから「ゆっくり休んで下さい」などと古女房の私が言ったところで「高津物語」をお休みする筈もなく、点滴しながら書き続けた。
病室の窓からは屋上が見え、一人でボンヤリ遠くを見つめている人や、早足で歩いている人が居たが、老夫婦がベンチに座り、点滴スタンドを持った奥様の足を、ご主人が摩(さす)っている姿を見た時は、自分と重なり涙が溢れた。
入院は二ヶ月余、お陰様で完治したが、未だ通院中の主人と、骨折箇所に異物の入ったままの私と、夫婦揃って傷んだ体を庇いながらの暮らしは、老老介護の極みで、厳しさを思い知る事となった。
美しく穏やかに老後を生きたいと願ってはいても、年ごとに生活機能が低下して行く中で、果たしてどんな確固たる心の持ち方と柔軟な身の処し方が出来るのであろうか。
せめて魂を浄化して、慎ましやかに老境を楽しみたいものである。
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4月26日