高津区版 掲載号:2018年1月5日号
  • googleplus
  • LINE

連載第一〇二七回 「数学恐怖症」 高津物語

 戦争のない時代に生まれたかったと思う。

 小学生の頃、戦争が何であるかも分からずに過ごしていた。もっとも、分かろうともしなかったから、いけなかったのだ。

 私は小学校三年生の時、学校に行かずお寺で遊んで過ごした。四年生で溝口に帰り、九九や割り算を皆が知っているので驚いた。自分だけが置き忘れられた存在だった。大事な時期に、初等教育で基礎から数学は学ばなければ理解できる訳がない。

 三年生で戦争が始まり疎開、四年生で帰宅して吃驚(びっくり)。戦争のせいで勉強できなかった。でも、自分が悪いと思って頑張った。

 九九等、疎開の寺子屋で学びたかったと思う。でも私はお寺で「轟沈(ごうちん)」等の歌をオルガンに合わせて歌って一日を無駄に過ごした。皆大山に疎開すれば良かったと後になって思った。

 高校も理数科が嫌いになった。小学校の延長だ。高校生の後半の夏休みに大岡山の東工大の夏期講習に行き、数学や物理の計算式を解く人達を見て驚いた。世にこんな人達もいるのかと思った。兄も苦労したらしいが、大変な受験勉強で京大に合格した。理科と数学で苦労した筈だが、何とか頑張って合格ラインに達したのだと思う。

 私は老人になった今、戦争の影響を改めて考え直している。戦争さえなかったら変わったと思う。戦争のない時代に生まれたかったと思う。生まれ変わるとしたら、戦争のない国に生まれたい。算数を、理科を、基礎から学びたいと思う。八十一才になって初めてそう思うようになった。

 生まれた時期が悪かった。不幸な時代に生まれ合わせたのだ。

 残された日々を悔いなく生きるため、私は思い切り本を読み「高津物語」に書き込んで死んでいきたいと思う。母が九十六才まで生きた。私もそれまで生きたいと思う。高津物語は生きている限り書いていきたいと思っている。私の分身だからだ。戦争はいびつな人間を作る。

高津区版のコラム最新6件

高津物語

連載第一〇四八回「高津の転換期」

高津物語

6月15日号

高津物語

連載第一〇四八回「高津の知った」

高津物語

6月8日号

高津物語

連載第一〇四八回「二子の懐古」

高津物語

6月1日号

高津物語

連載第一〇四七回「梶ヶ谷を歩く」

高津物語

5月25日号

高津物語

連載第一〇四六回「高津物語22年」

高津物語

5月18日号

高津物語

連載第一〇四五回「連休に兄二人を想う」

高津物語

5月11日号

高津区版の関連リンク

あっとほーむデスク

高津区版のあっとほーむデスク一覧へ

イベント一覧へ

半年の罪穢れを払う

半年の罪穢れを払う

6月30日 溝口神社

6月30日~6月30日

高津区版のイベント一覧へ

最近よく読まれている記事

コラム一覧へ

  • 高津物語

    連載第一〇四八回「高津の転換期」

    高津物語

    6月15日号

  • 高津物語

    連載第一〇四八回「高津の知った」

    高津物語

    6月8日号

高津区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2018年6月15日号

お問い合わせ

外部リンク