神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS
高津区版 公開:2014年6月20日 エリアトップへ

高津物語 連載第八四八回 「祈願寺」の意味

公開:2014年6月20日

  • LINE
  • hatena

 前号標題が「祈願寺」だったことを疑問に思われた方も多かろう。「祈願寺」とは、江戸時代に一般的であった現世利益信仰を守ることを主目的とし、民衆の積極的な宗教要求にこたえる所に、寺院存立基盤があるとしている。具体的には徳川家の永遠と、天下泰平・武運長久・すなわち封建制の恒久的な維持・発展を盛んに祈り、幕府・諸藩の保護に対し、現体制の永遠を積極的に祈ることでこれに応えていた寺院であった。「祈願寺」は、密教的寺院の次に日蓮宗が多く、葬祭を行う「菩提寺」の要素も兼ねていた。面白いのは巻頭に中尾堯という大学教授らしき人が「近世日蓮宗寺院」に祭られた諸仏を「寺社書上」という史料で調べると、寺の本尊は釈迦多宝、十界勧請大曼荼羅で統一され、内陣脇、小仏堂には、諸神諸仏が勧請されたこと。仏像としては大日・観音・不動・毘沙門・三十番神・鬼子母神・妙見等、境内鎮守としては弁天・大黒・稲荷・八幡等。元禄からは、現世利益の効能を語る祖師日蓮の縁起―滝の口の法難、伊豆の流罪、小松原法難、佐渡への流罪の劇的場面が語られ、日蓮伝記の神秘的代名詞―「お祖師さま」という現世利益的響きを持って庶民の呪術的信仰を更に盛り上げた。中尾氏は最後に「江戸時代における日蓮宗信仰は、高遠な宗教的世界観等とは縁遠く、仏教の教義からは呪術的利益信仰という低次元にとどまる性格であった。自由な布教活動が全面的に禁止され、新しい世界観を持ち、それを実践してゆくことが全面的に禁止された時代で、日蓮宗が陥った大きな宗教的空洞に外ならなかったのだ。この空洞こそ、形式的な葬祭と低次元の現世利益の信仰を意味する」と結論付けている。

 『新編武蔵風土記』は「下宿ニアリ興林山ト号す、日蓮宗池上本門寺ノ末寺ナリ開山開基ノ由緒詳ラカナラズ昔ハ天台宗ニテ本立寺号セシトソ寺伝ニ明応五年時ノ寺持興林僧都或夜ノ夢ニ千眼天王ヨリ日(蓮)宗帰依スへシト告チ蒙リケルニ当所ノ地頭階方新左エ門宗隆ト云モトヨリ池上本門寺ノ壇越ニテ法華信心ノ人ナリシカ是モ同夜ニ同霊夢ヲ蒙リ語リアヒテ互ニ奇異ノ思ヒヲナシケル興林遂ニ池上ニ登リテ本門寺第八世ノ貫主日調に会謁シテ師弟ノ約ヲナス日調頓テ名ヲ宗意ヲ給シ辞屈シテ改宗セシナリト」とある。
 

高津区版のコラム最新6

GO!GO!!フロンターレ

市民健康の森だより

不定期連載

市民健康の森だより

第134回 ジャガイモの成長に欠かせぬ「芽カキ」について

4月26日

市民健康の森だより

不定期連載

市民健康の森だより

第133回 熱心な受講者に感心「里山保全体験教室」

4月19日

教えて!職人さん

教えて!職人さん

vol.51 「外壁塗装」防水工事に重要な事とは…?

4月19日

GO!GO!!フロンターレ

お金のはなし

税理士・FPの高橋さんが解説「金融投資について考える」

お金のはなし

4月19日

あっとほーむデスク

  • 5月20日0:00更新

  • 4月15日0:00更新

  • 4月8日0:00更新

高津区版のあっとほーむデスク一覧へ

コラム一覧へ

高津区版のコラム一覧へ

バックナンバー最新号:2024年4月26日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook