連載第一〇二八回 「街道の高層化」 高津物語
大山街道溝口宿は周知のように、江戸時代中期からの古い街道である。この街道が、ここにきて大きく変わろうとしている。
大山街道溝口宿旅籠で宿主を兼ねた丸屋が十二階のビルにする工事中である。丸屋の斜め前の稲毛屋金物店も店蔵を後方に引っぱり、街道沿いに十二階ビルを建築中である。
この他、二ヶ領用水沿いにあったJRアパートも取壊されて高層化すると聞く。
古い大山街道は平成の時代で遂に消えていく。悲しいことだけれど、時代が時代だから仕方がない。私のやったことといったら、国木田独歩の碑を高津図書館前の緑地に移したことくらいだ。戦時中、強制疎開された『大山街道中宿』高層化は、丸屋の高層化で一先ず終了するが、思えば思うほどにすごいことだと思う。
強制疎開の二次計画でかろうじて疎開を逃れた旧六ヶ村堀の商店も、高層化の計画があると聞く。何とかしてほしいと願うばかりだが、これもこれ、時代の移り変わりで仕方のないことなのだろうと思う。
結局、私達の生きてきた時代は、戦争から復興してきて高層ビルに住まいして終焉となるのだと考えた。
高津物語の歴史は、奇しくも大山街道のビル化の歴史でもあったと総括できる。予想も想像もしなかったことであった。
というわけで、もっともっと大山街道の高層化は進化すると予想される。「何か押しつぶされそうだ」等と言わず、大山街道溝口も遂にビル・ラッシュになったかといい意味で受け止めて欲しいものだと思う。
街道らしい街道と好評だった「溝口」は、かくして生まれ変わった。国木田独歩、島崎藤村が大貫雪之助を訪れては谷崎潤一郎がやってきた。岡本かの子の恋のアバンチュールがあり、岡本太郎が身を寄せた大貫家も今はなくなった。古い歴史や家屋がなくなっても、古い歴史を飽きずに高津の文化のために、いつまでも追っていきたい。
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