大震災時の一時避難場所として活用しようと、川崎市が登録を推進する「市民防災農地」の標識設置が進んでいない。登録農地のうち設置数は全体の約3割にとどまっており、市は年間30カ所の新設を掲げ「市民への周知を強化したい」としている。
防災農地は大震災時、各地域に指定される避難所へ移動が困難な場合の一時的な避難場所。阪神・淡路大震災のときは農地が避難場所や避難経路として活用された。
市は防災機能を担う貴重なスペースとして、300平方メートル以上の農地所有者の協力で1997年から防災農地の登録を開始。場所や機能を市民に周知するため、使用上の留意点などを記載した標識の設置を2017年度から進めている。
市農地課担当者は「安全確保のためのより身近な場所。有事の際、逃げ込めるよう日頃から確認しておいてほしい」と話す。しかし、標識が設置済みなのは登録525件に対し150件のみ。地域住民からは「場所を全く知らないため、いざというとき活用できない」との声も聞かれる。市は通学路や住民の通行が多い場所など優先度の高い所から設置を進め、年間30カ所の新設を目指す。
一方、登録農家の一人は「標識は作業の邪魔になる」とも。農地が家と隣接する所有者からは難色を示す声もあり、設置が進まない一因といえる。市危機管理室は「防災農地は農家の協力によるもので、設置は強制できない。丁寧に説明を続け、理解を求めていく」としており、イベントや広報物を通じた市民啓発にも努める。
JA、市に要望書
市と共同で登録を進めるJAセレサ川崎農業協同組合は9月2日、市に要望書を提出。多くの市民への周知方法の検討や、事業推進に必要な情報提供を求めた。
JA担当者は「人口増も踏まえ、より必要性が高まる。防災農地を増やせるよう協力したい」と話す。一方で「一時避難場所が足りない地域で登録促進を求められるが、そこに農地がない場合もある」と市からの情報不足を指摘。市との連携強化を模索する。今年度の登録受付は9月末まで。
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