災害対応ロボットを開発・販売する(株)移動ロボット研究所(市内台・小栁栄次代表取締役)がこのほど、県が公募していた火山対応ロボット開発プロジェクトを担う事業者に選ばれた。火山活動に伴い、現在も噴火警戒レベル2(火口周辺規制)がしかれている箱根町大涌谷での運用を目指しており、12月をめどに現地に投入するという。
神奈川県は大涌谷周辺の立ち入り禁止区域内におけるロボット活用を目指し、火山活動対応の「ドローン」「地上走行車」「地すべり警報システム」の開発を担う事業者を9月から公募していた。10月26日には、9件の応募から採択した3件を発表。そのひとつ「火山活動対応地上走行車」の開発事業者に東京都内の企業とともに選ばれたのが、(株)移動ロボット研究所だ。
これを受けて同社は現在、火山灰や岩が転がる悪路でも走破する車体に、各種センサーを搭載したロボットを設計している。立ち入り規制解除の判断材料となる地表の火山ガス濃度など情報収集やサンプリングを行うのが主な任務で、12月をめどに現地に投入する予定だという。
県の担当者は「『さがみロボット産業特区』で培った生活支援ロボットの実用化ノウハウを活かせれば。表面、地上そして地中内部と火口周辺の環境を包括的に調査し、今後の対策に役立てたい」と話す。
教師から大学教授へ
2年前から市内台に会社を構え、「減災」に向けたロボット技術の開発を行っている同社社長の小栁栄次さん(64)は異色の経歴の持ち主だ。
県内の工業高校で教師をしながら、34歳で大学院へ進学。51歳で博士号を取得し、大学教授に転身した。桐蔭横浜大学時代に指導していたゼミ活動の一環でレスキューロボット世界大会に参加し、2回優勝したこともある。
本格的に災害対応ロボットの開発に乗り出したのは2004年。新潟県中越地震が発生し、初めて被災地にロボットを投入した時だったという。小栁さんは「コンテストと現場の違いを痛感した。それ以来、『役に立たないロボットは作らない』という想いで開発に携わっている」と話す。
「技術で社会に貢献」
小栁さんは千葉工業大学で教鞭をとっていた07年に、同大学初となるベンチャー企業「移動ロボット研究所」を設立。その後、11年に発生した東日本大震災後の福島第一原子力発電所内部など、人が立ち入ることができない災害現場で活躍するロボットを開発してきた。現在社員は4人。藤沢市消防局と共同で災害時の初動調査を行うロボットの開発にも取り組んでいる。
小栁さんは「06年から毎年、浅間山や阿蘇山など各地の火山で実験をしてきた。箱根は地形など、他にはない難しい点が多いが、ロボットは最初から100点になることはない。できる限りのことをやっていきたい」と話している。
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