市内の海岸に漂着した海藻を飼料にして育てたブランド豚「鎌倉海藻ポーク」が、普及に向けた一歩を踏み出した。4月にオープンしたレストランが採用を決め、好評を博しているほか、宅配弁当を製造する事業所による新メニュー開発も進んでいる。
鎌倉海藻ポークは、市内岡本で料理教室を主宰する矢野ふき子さんと、厚木市にある畜産事業者の臼井欽一さんが中心となって、2018年秋から育成してきたもの。
鎌倉に打ち上げられる海藻は年間3000トンと言われているが、市場価値がほとんどないため、これまでは利用されていなかったという。
そこで矢野さんらは、海藻の回収と加工を障害のある人が通う福祉作業所に依頼。水産資源の有効活用と障害者の収入増を実現する「水福連携」を目指してきた。
海藻をエサに育った豚肉は、脂の口どけが良く低脂肪で、生活習慣病の予防効果が期待されるオレイン酸の含有量が多いなどの特徴も出ているという。
昨年10月には、臼井さんが矢野さんの料理教室の目の前に販売所を設置。現在は注文に応じて通信販売を行っている。
MUJI店長も太鼓判
そんな海藻ポークを事業者として初めて採用したのが、今年4月24日、若宮大路沿いにオープンしたレストラン「カフェ&ミールMUJI」。
仕入れを決めた店長の松木健太郎さんは、長く飲食業に携わってきた経験から「地元の食材は地元で食べるのが一番」と、(株)良品計画が運営する全国約30店舗のレストランの中で唯一、地産地消をコンセプトとした店作りを決心した。
昨年12月以降、漁港や農家へ自ら足を運んで食材を探していた時、矢野さんと出会い、「柔らかくスッキリとした脂の旨味もあり、豚肉のイメージが変わった」。ポークジンジャーとして商品化したところ、6種類のメニューの中でも1番人気となった。オープンから1カ月で豚2頭分、約40
kgを仕入れたが、今後さらに量を増やすという。
松木さんは「味はもちろん、このひと皿に込められた生産者の熱い思いをたくさんのお客様に感じてほしい」と語る。
年内に弁当も登場
宅配弁当事業を行う福祉作業所「れざみ」(御成町)にも今春、鎌倉海藻ポークが納品された。
同じ法人が運営する事業所「みらいの種」の職員が一昨年、矢野さんの活動を知り、海藻の回収や乾燥、包装などの工程を請け負うことになったことがきっかけだ。
現在は海藻ポークを使用した新メニュー開発が進んでおり、5月26日には、職員や利用者がミンチ肉でハンバーグ弁当を作った。管理者の土居裕治さんは「ソーセージやメンチカツなど、ほかにも試作を重ね、年内中の商品化を目指したい」と期待を込める。
矢野さんは「様々な過程を経て誕生した豚の味に納得し、使ってもらえるのはうれしい。もっと扱う店舗が増えて、多くの人が口にできるようにしていきたい」と話す。
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