真言宗青蓮寺(市内手広5丁目)所蔵で鎌倉時代後期の作とされる「愛染明(あいぜんみょう)王坐像(おうざぞう)」が、89年ぶりに同山に戻った。今月1日には、帰還を祝し魂入れを行う「還着本座法会(げんじゃくほんざほうえ)」が執り行われた=写真。同坐像は、1923(大正12)年の関東大震災で被災し、長い年月、解体された状態になっていたが、東京藝術大学大学院の籔内佐斗司教授らの協力により4年かけて修復された。
関東大震災により、頭部や腕などがバラバラになってしまった愛染明王坐像は、当時、修復困難とされ石炭箱で保管されていたという。それから約30年後、本尊である弘法大師像(鎖大師)の修復に際し、同坐像について渋江二郎鎌倉国宝館館長(当時)に意見を求めた。渋江氏は歴史的価値が高いと判断、そのため同山は、この坐像を国宝館に寄託した。以後50年余り修復の目途が立たず、国宝館の地下倉庫に保管されてきた。
転機は2008年。同山が東京藝大大学院の籔内教授に五輪塔童子(現在、本堂に安置)の造立を依頼する。
それを知った国宝館前館長の三浦勝男氏は、仏像等の保存修復研究の第一人者である籔内氏に同坐像の状況確認を依頼し、本格的な修復が開始された。
三浦前館長は、約50年前に手広から鶴岡八幡宮の国宝館まで、リヤカーで坐像を運んだ経験を持ち、思い入れも人一倍だったようだ。
両震災に縁「乗り越える力感じる」
法会当日は小雨の中、服部全弘住職らの先導により光背や台座など、いくつかに分けられた坐像が本堂に運ばれ、集まった檀信徒ら約80人に見守られる中、籔内氏の研究室スタッフにより組み上げられた。
安置された坐像を前に住職が読経などを行い、その後公開された。
挨拶した服部住職は「何とか修復しようと先々代、先代が苦労してきた。皆様に本当に感謝したい」と涙ぐんだ。また、関東大震災で被災した坐像が東日本大震災の年に戻ってきたことを指摘し、「これも何かの縁。希望や、災難を乗り越える力を感じる」と語った。
法会の様子は、12月27日(火)午後10時25分から放映されるNHK教育テレビ番組「直伝和の極意」の中で紹介される予定。
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