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鎌倉版 公開:2015年7月31日 エリアトップへ

戦後70年企画 第6回 相模湾埋めた米軍の大艦隊 材木座在住 小山賢太郎さん

社会

公開:2015年7月31日

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小山さんが掲載したイラスト
小山さんが掲載したイラスト

 第二次世界大戦の終結から今年で70年。日本が連合国への降伏を受け入れた1945年8月15日を人々はどのように迎えたのか―。漫画家らが絵と文章で振り返った証言集が今春、出版された。材木座在住の漫画家・小山賢太郎さん(76)も証言を残した一人。小山さんは「あの日」の様子と、その数日後に見た忘れえぬ光景を描いた。

 『私の八月十五日 昭和二十年の絵手紙』と題されたこの証言集は、森田拳次さん、ちばてつやさんら漫画家や著名人が、絵と文章で終戦の日と戦中・戦後の記憶をたどるもの。

 もともと2004年に刊行されたが、当時の出版社がなくなり絶版となっていたため、エッセイストの海老名香葉子さんらが中心となって復刊に取り組んできた。新たな原稿も加えて今年4月、(株)今人舎(東京都国立市)から出版された。

あの日感じた「静けさ」

 6歳で終戦を迎えた小山さん。当時から現在と同じ、材木座に住む。終戦間際は毎日のように襲来する米軍機と空襲警報におびえる一方で、おにごっこなどに興じる子どもらしい日常もあったという。

 「あの日」特別な放送があるといって人々が集められた。ラジオから日本の降伏を知らせる玉音放送が流れると「内容は全く分からなかったけれど、一瞬、まったくの静けさがきた」と小山さんは述懐する。

 今回の証言集には、それから1週間ほどたった日の光景を掲載した(=左イラスト)。小山さんが海岸に出ると、そこには水平線を埋め尽くすように停泊するアメリカ軍の艦船があった。「これでは勝てるはずがない」と力なくつぶやく大人たち。アメリカの圧倒的な物量は、敗戦という現実をまざまざと実感させるものだった。

帰らなかった父

 小山さん一家にとっての「終戦」はもっと後に訪れた。45年春に出征した父・由太郎(よしたろう)さんの行方が、なかなか分からなかったのだ。

 父の戦死を告げる知らせが届いたのは「終戦から2、3年後だったと思う」と小山さん。そこには出征後間もなく、フィリピンの戦場で由太郎さんが命を落としたことが記され、一緒に届いた箱には骨の代わりに石が一つだけ入れられていた。

 「その後も祖母は引揚者のニュースを伝える新聞や映画を食い入るように見ては『由太郎に似た人がいた』と言っていました。事実を受け入れられなかったのでしょう」と小山さんは話す。

 「厳しかったけれど、優しい人でした」。幼かった小山さんにとって父との思い出は決して多くないが、その背中は大きく暖かく映っていた。

 小山さんは戦後、出征前に由太郎さんが遺した手紙を家族から渡される。「賢太郎がなすべきこと」と題されたその手紙には「兄弟仲良く」「人のために生きろ」などの言葉が綴られていた。「文字の一部が涙でにじんでいてね」。わずか27歳で命を散らした父の無念を思い、言葉を詰まらせる。

 小山さんにとって、もう一つ父を感じるものがあった。由太郎さんは祖父が立ち上げた造園会社を継ぎ、若くして職人たちを束ねる棟梁として活躍していた。「ある日、父が描いた庭のデザイン画を見つけたんだけど、とても美しくて。自分も描きたいと思った」。

 その後、自然と絵に魅せられていった小山さんは、やがて『フクちゃん』で知られる漫画家・横山隆一さんとの出会いなどをきっかけにデビュー。サラリーマンをしながら新聞・雑誌に主にヒトコマ漫画を掲載し、現在も第一線で活躍する。「漫画家になりたい、と強く思ったわけではなかったのに、節目節目で必ず導いてくれる人がいた」とこれまでの歩みを振り返る小山さん。その原点には、亡き父への思慕があったのかもしれない。

 『私の八月十五日』は全国の書店で販売中。問い合わせは今人舎【電話】042・575・8888へ。
 

証言集を手にする小山さん
証言集を手にする小山さん

戦後70年 語り継ぐ戦争の記憶

タウンニュースの各発行エリアで企画・編集した関連記事まとめ

http://www.townnews.co.jp/postwar70.html

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