タウンニュース鎌倉編集室では、2020年の年頭にあたり恒例の市長インタビューを行った。このなかで松尾崇市長は、市役所本庁舎の移転や神奈川県、藤沢市とともに進める「村岡新駅」の誘致、東京五輪に向けた準備などについて語った。(聞き手は本紙編集長、井方照雄)
──市役所本庁舎の移転について伺います。昨年7月に「基本構想」を発表しましたが、今後のスケジュールは。
「まず今年度は、新たな本庁舎の基本計画と、現在市役所がある場所の利活用に関する基本構想の検討を支援する委託業務の発注を予定しています。どちらも2020年度内の策定を目指しています。この2つを一体的に検討することで全体の事業の理解がより深まっていくと考えています。その後のスケジュールについては、採用する事業手法によって異なりますが、市役所の開庁については28年度中を目指して進めていきます」
──従来は25年度中の開庁を目指していたと思うのですが、3年延びたのはどのような理由でしょうか。
「本庁舎の移転先となる深沢のまちづくりを神奈川県、藤沢市と一体となって進めていく予定でして、これらの都市計画決定の手続きとその後の区画整理事業に時間がかかるため、28年度中の開庁が現実的と判断しました」
──市役所本庁舎の位置を定める条例を議会に提出するタイミングは。
「時期は、行政実例に照らし、本庁舎建設に必要な予算の概要が明らかになった時点が適当であると考えています。このため、本庁舎整備の基本構想、基本計画の策定を進め、建設に必要な予算の概要が明らかになった時が適切と考えています」
──深沢は洪水の際に浸水の懸念がありますが、そうした声にどのように対応しますか。
「浸水想定を踏まえて事業区域全体で約2万4千800トンの雨水貯留機能を整備する予定です。さらに必要な盛り土などによって浸水被害対策を行っていきます。ただ昨年の台風被害などを踏まえて、改めて検証の必要があると考えています。また専門家の方による協議を昨年行った結果、ハード面はこれ以上必要ないと。ただ避難計画の策定などソフト面での充実が必要だという結論になっています。今後はソフトで、どのような対策ができるかを専門家に聞きながら進めていくということになります」
――最大150億円と試算される費用はどのようにねん出しますか。
「基本的な財源は基金と地方債、国庫補助金、一般財源の4つです。全国的に本庁舎更新という流れがあり、国や県に財政負担を要請しながら市の費用負担の軽減に向けて研究していきます。また、全体の流れの中でランニングコストの削減も含めて財源を生み出していきたいと考えています」
──民間の力を入れることも、引き続き検討していくのでしょうか。
「もちろん役所だけを作るということではなくて、民間の資金やノウハウの活用も取り入れていきたいと考えています」
3県市で「村岡新駅」誘致へ
――県、藤沢市と協議会を結成して村岡地区に新駅の誘致を目指す考えを明らかにしています。理由を教えて下さい。
「深沢は鎌倉、大船に次ぐ本市の第3の都市拠点として、働くまち鎌倉の実現を目指す地域になります。この地域には研究施設や湘南アイパークといったインキュベート施設があり、こうした既存施設とも連携してまちづくりを進めることで、ヘルスイノベーションの最先端拠点の形成を目指していきたいと思っています。そういうなかでの地域のポテンシャルの向上に資するものですから新駅誘致を目指していきたいと考えています」
──今後のスケジュールは。
「現在、JR東日本が概略設計を行っています。その成果が20年度中に出てきますので、それをもとに県、藤沢市と実現の可能性について見極めをしていくという流れになります。そのうえで今後のスケジュールもお示しできると思います」
──実現性を判断する最も大きな要素は何でしょうか。
「一番は費用面です。概略設計ではホームや駅舎、自由通路の位置や形態も含め事業費がかなり具体的なところに踏み込んだものが出てきます。費用が想定よりもあまりに高額になるようでしたら、進められなくなりますから費用負担との兼ね合いになると思います」
──地元自治体の負担が大きい「請願駅」ではなく、「戦略的新駅」による設置を目指しているということですね。
「JR東日本にも戦略的新駅として位置付けていただいたうえで、費用負担をお願いしていきたいと考えています」
――費用をどのようにねん出しますか。
「駅は藤沢市に設置されますから、鎌倉市の負担は最小限に抑えなくてはならないと思っています。考え方としては『駅なし単独』でまちづくりをする場合と『駅あり一体』で行う場合の市の財政負担を比較すると、一体でまちづくりをした時の方が国の負担を多く求めることができます。鎌倉市の負担をより軽くするためにも一体的なまちづくりを進める必要があると思っています」
──深沢のまちづくりのためにも市役所移転や新駅が必要ということでしょうか。
「市役所の有無はまちづくりの成否を直接決めるものではなく、近隣施設との連携による働くまちの実現のために新駅が必要だと考えています」
玉縄青少年会館の「廃止」
──玉縄青少年会館についてお尋ねします。2020年度中としていた廃止方針が議会で否決されました。事前に住民利用者への説明が少なかったのはなぜでしょうか。
「玉縄青少年会館の廃止については、公共施設再編計画に明記していまして、住民・利用者の皆さんにも認識が広まっていると考えていました。しかし実際には『突然聞いた』という方が多かったということは反省すべき点だと思っています。今は地域の方と話し合いをさせていただいて、今後の方向性、あるいは玉縄地域の公共施設の考え方を今一度、ご理解いただきたいと考えています」
──廃止の方針自体は変わっていないのでしょうか。
「議会で否決をされていますから、そのままでは進められません。地域の方と話し合いをしていきます」
──先ほど話に出た公共施設再編計画について、なぜこれを進めているのか、改めて教えて下さい。
「本市の公共施設の多くは、老朽化してきておりまして、今後継続して使うには危険な建物もあります。今後全ての施設を維持するには、40年間で約2千億円が必要だという試算が出ています。年平均50億になりますから、とても今の財政状況では賄えません。さらには人口減少が進むなかで公共施設を維持していくためには費用を半分に抑えていく必要があり、施設の集約を進めています。できる限り現在の機能を損なわないように維持していきたいと考えておりますので、ご理解いただきたいと思います」
東京五輪に向けた準備
──いよいよ東京五輪が開催されます。鎌倉市はフランスのホストタウンとなっていますが、選手との交流などどのように進めていきますか。
「フランスのセーリングチームが6月から8月上旬にかけて来日する予定でして、滞在期間中により多くの市民が交流し、スポーツだけでなくフランスの文化について学んだりする機会を設けたいと考えています。また6月30日に聖火リレーが通過しますので、市民の皆さんと一緒に盛り上げていきたいと思います」
──鎌倉駅東西口の整備状況は。
「東口の工事については、歩行者の安全確保や利便性の向上を図るための歩道の拡幅、舗装の打替えを目的として昨年5月7日に工事に着手し、今年11月に完成予定です。西口の方も台風で若干影響が出ていますが、五輪前には終わるように進めています」
──課金による流入抑制策「ロードプライシング」の検討状況を教えて下さい。
「2020年の本格実施を目指して進めてきましたが、スケジュールについては見直さざるを得ない状況です。国交省の協力も得ながら課金の考え方と手法の解決を目指して鋭意進めています。時期は少し遅れますが、早期に実現できるように進めていきます」
1月10日号に第2弾を掲載します。
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